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「生まれてこなきゃよかった」フィリピン人ハーフの“無国籍女性”が辿った苦しい半生と「日本人男性の悪行」

日本人は「ダマすように現地女性を」

 なぜ多くのフィリピンハーフの子どもが生まれたのだろうか。その理由を探ると、単に男女の問題では片付けられない、経済格差や女性の人権問題が見えてくる。現地でボランティアをしながらJFCの取材を行ってきたライターの野口和恵氏はこう語る。 「フィリピンでは、海外へ出稼ぎに行くのがメジャーであり、現在も、国民の10人に1人が海外で働いてると言われています。日本では、バブル期からフィリピン人女性の来日が増え、2004年のピーク時には年間8万人も来ていました。  仕事を紹介するエージェントが扱っていたのが興行ビザ。本来は演劇や演奏、スポーツなどの活動をするためのビザですが、仕事先にあてがわれていたのは、ナイトクラブでした。そこで男性を接待するうちに、距離が縮まって恋仲に発展し、子どもができるというのが典型的なパターンです。伝統的なダンスパフォーマンスをすると聞いて練習してきたのに、まったく披露する場がなく、ダマされた思いをする女性も少なくありませんでした」  興行ビザは更新しても6か月しかいられない。そのため、フィリピン帰国後に出産し、日本の父を持つ子どもがフィリピンでたくさん生まれた。フィリピン人女性の中には、日本に移住して、子どもを育てようとする人もいたが……。 「日本で子どもと暮らすためには、在留資格を整える必要があるため、とても大変なことで、男性側の協力がなければまず不可能です。しかも、男性が真剣な交際ではなく遊びであったため、結果フィリピンに取り残されてしまうケースがとても多かった」

フィリピン人のほとんどはカトリック

JFC

ライター・編集者の野口和恵氏

「それでも、数年ぐらいはやり取りがあって、遊びに行ったり、お金を送ったりするケースは結構あるのですが、5~6年経つと途絶えてしまう。男性が高齢で亡くなることもありました。もともと母親が出稼ぎに行くような経済状況だと、父親からの経済の援助が切れると、貧困が深刻になる。どうにかするために、またお母さんがまた出稼ぎへ行く。それで日本のナイトクラブで働いて、同じように男性と知り合って子どもができる。腹違いの子どもが増えて、さらに経済状況が厳しくなるというケースもありました」  父親がいないことは、日本以上にフィリピンの家族観に重くのしかかると野口氏は解説した。 「フィリピン人のほとんどはカトリックであるため、家族の繋がりを大切にする文化が強い。日本人以上に、母の日や父の日を大切するので、家族連れで休日に外出するのも当たり前なのに、それができないのがとてもつらいのです。また、『私の体半分はお父さん、もう半分はお母さん』という価値観があって、アイデンティティの問題に大きくかかわるのです。『お父さんを知らないということは、自分の半分がないような感じがする』と子どもたちはよく口にします。父親からつけてもらった日本名があっても『会ったこともないし、日本に行ったこともない。自分はいったい何者なんだ』と」
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弱い立場を利用した日本人男性の悪行
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企画や体験レポートを好むフリーライター。週1で歌舞伎町のバーに在籍。Twitter:@tsumami_gui_

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