――そういう積み重ねで、早く入られるようになったのですね。 小野：渡さんが必ずスケジュールの30分前に入る方だったので、それに合わせて僕はそれよりも早く入るようにしていたんです。そのうちにどんどんみんなも早くなっちゃって、あるとき前倒ししすぎて集合時間よりも前に撮影が終わったこともありました（笑）。 ――それはすごいですね。小野さんは後輩の役者と共演する際、本読みの時点でその人が大成するかどうかが直感でわかり、ほとんどの場合が予想通りだったとか。大ベテランである小野さんから見て成功する人としない人との間にある違いとは何ですか？ 小野：まずは、「自分を解放しているかどうか」ですね。僕自身は最初にそれができなかったから、オーディションにも落ちまくっていたのかなと思っています。「この人は絶対に伸びるな」と本能的に感じる人の共通点は、物怖じせずに堂々としていて、心を開いているような人ですね。 ――俳優座の養成所の同期にも成功した方々はたくさんいらっしゃいますが、間近に見ていて驚いたことなどがあれば教えてください。 小野：いい意味で一番変わったのは、地井武男、最初は同期のなかでも劣等生みたいな感じでしたが、コツコツと努力して、亡くなるまで自己改良を続けていたので、本当に偉かったなと思います。あと、原田芳雄は最初から度胸があってすごかったですね。それに比べて僕はモジモジしていてスタートが遅かったですけど、そういった2人や前田吟とか、たくましい人たちが周りにいたので、それに引きずられていったのかもしれません。たとえ不器用だとしても、どんどん解放して前に出ることが大切だなと感じています。 ＜取材・文／志村昌美　撮影／ 中川菜美＞ 映画宣伝マンを経てライターに転向し、海外ニュースや映画紹介、インタビューなどを中心に執筆。Twitter（@masamino_19）