更新日:2024年05月16日 12:49
仕事

「仕事ができない=やる気がない」と単純解釈していた…パワハラ上司が自分の“過ち”に気づけたわけ

もう一つの観点は…

 もう一つは、職場のマネジメントやリーダーシップのレベルです。上司には、部下の仕事はもちろん、メンタルについてもマネジメントやフォローをする責任があります。それはAさんだけでなく、Aさんの上司についても同じです。部下の方が相談しやすいように予めガイドラインを作ったり、コミュニケーションの時間を定期的に予定しておくなどの仕組み化をしておくと、部下の方はもちろん、お互いにコミュニケーションしやすくなるのではないでしょうか。  もし、それでもタイミングが悪く、Aさん自身では部下Bさんからの相談に対応できない状態だったのであれば、「俺は悪くない(お前が悪い)!」と安易に自分を正当化する前に、「ごめん。今は自分も手一杯で相談に対応する余裕がないから、後でもいいかな?」と相手に自分自身の状況や気持ちを正直に伝えていたなら、また違う結果になっていたかもしれません。  あるいは、ご自身の上司に対応を相談したり、同じ業務の経験者を紹介するなど、自分一人だけで抱え込んでしまわずに、思い切って周囲の人に助けを求めても良かったと思います。  もちろん、「できない自分」を認めることは、非常に勇気が必要なことです。周囲からの目が気になったり、自分自身のプライドが傷つくこともあるでしょう。  それでも、自分が(自分自身を含む)相手のニーズに応えられなかったり、読み間違えたりしてしまったのなら、そのことを正直に認めることで、一緒に違う方法を考えたり、また学び直したりすることができます。  そうした個人の変容を通して、組織もまた「ケアする職場=ケアリング・ワークプレイス」へと変容していくことができるのです。

相手の立場や状況を考えず一方的に正論を言うのはパワハラ

 後日、Aさんは、Bさんとのその後について教えてくれました。 「自業自得とは言え、今もBさんとは会話できていません。Bさんに謝罪の手紙を書き、人づてに渡そうともしてみましたが、やはり受け取ってはもらえませんでした……」  Aさんは、「私にとって、GADHAで『弱音や愚痴を吐いてもいい』『誰かに助けられることがあってもいい』と言われたのは衝撃でした。ただ、いきなり弱音や愚痴を言われても皆も困ると思うので、周りには雑談的に小出しにすることを心掛けています。まだうまくできないことも多いですが、一人で限界まで我慢したり抱え込まないようには意識しています。」と続けて教えてくれました。そうした現状を話すAさんのどこかすっきりとした表情が印象的でした。
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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