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ラノベ市場に続々と参戦する、出版社&作家の現状

一昔前に比べるとその勢いはやや落ち着いたものの、2000年代に急成長を遂げたライトノベル市場。「オタク向け」などという考えを改めねばならないほどのメガヒットを生み出している。もはや現代人の新たな教養になるかもしれない、ラノベの今を追った! ◆ラノベ市場をこぞって目指す出版社と書き手たち  出版不況のなか、ライトノベル市場にそれまでラノベと縁のなかった出版社が新規参入している。講談社ラノベ文庫をはじめ、宝島社このラノ文庫、PHPスマッシュ文庫、主婦の友社のヒーロー文庫、大手出版社からビジネス系などまでが、ここ3年で続々と参入している。
オーバーラップ文庫

4月25日創刊。志倉氏のほかにも、弓弦イズル氏などの大物作家陣、アニメ演出家の山本寛氏なども執筆予定だ

 そんな熾烈なラノベ市場に総合エンターテインメント企業であるオーバーラップが、オーバーラップ文庫を立ち上げて今春参入する。  同社社長であり、同文庫編集長の永田勝治氏は現状をこう見る。 「飽和状態は事実。だが、ラノベの魅力的なキャラクター・物語を中心にしたコンテンツはアニメなどメディアミックスとも相性がよく可能性も大きい。面白いコンテンツを生み出すための重要なメディアのひとつと考えています」  ゲームクリエーターの志倉千代丸氏など、業界外からの執筆者を多数迎えることについても、「業界の垣根を越えて面白い場をつくれる。ラノベの枠を広げる作品を仕掛けたいですね」と意欲的だ。  新規参入を狙う企業があるのと同様に、作家志望者にとってもラノベ業界は魅力的に映るようで、志望者は後を絶たない。 「『電撃大賞』の小説部門では、昨年6078作品もの応募がありました」と、アスキー・メディアワークス社長の塚田正晃氏は語る。 「数千作の中から選ばれた方が、電撃の仲間入りをし、電撃文庫で活躍しているのがヒットの原動力の一つになっていると思います」  一般文芸の大きな賞でも応募は1500作品ほどとも言われるなか、ラノベ志望者の多さが窺える。  また、ネットの存在も大きい。 「ネット小説投稿サイト『小説家になろう』などでは、閲覧数が数百万にもなる人気作家が登場しています。昨年のナンバーワンヒットメーカー、川原礫もデビュー前は自身のサイトで小説を発表していました。」(若尾氏)  また、異業種と兼業でラノベ作家としてデビューする人も少なくない。 『青春サイバーアクション漫才ハードボイルドコメディな転校生』でデビューしたリタ・ジェイ氏は、ラノベの執筆活動と並行して、芸人としてコントの原稿も書き、自ら舞台に立つ日々を送っている。 「ラノベは異世界的な設定や濃いキャラクターが新鮮。自分で書いてみるとコントの執筆のときのはじけ方と相性もいい。ストレートなボーイミーツガールなど、アニメやマンガにハマっていた10代の頃へのアンサーとして書けるラノベは魅力的だと思います」(リタ・ジェイ氏)
書泉ブックタワー

月に300タイトルは世に出ているというラノベ。入れ替わりが激しいため、書泉ブックタワーでは週ごとの売れ筋を紹介している

 こうした才能が集まるラノベからは、一般文芸へと転身する作家も登場している。直木賞を受賞した桜庭一樹氏や、同賞の候補に挙がった有川浩氏などである。  ただ、夢見る作家志望者が多いものの、作家活動は甘くない。 「人気作家でも兼業作家が多い。ほとんどは、3冊刊行でも200万円程度の収入」(若尾氏)だという。  新規参入する出版社や作家志望者が増える一方で、ラノベ業界の老舗は、すでに新たな展開に動いている。 「’09年末に創刊した『メディアワークス文庫』は、かつて電撃文庫を読んでいて、大人になっても小説を楽しみたいという方に向けて立ち上げたものです」(塚田氏)  前回(https://nikkan-spa.jp/374731)述べたように、このブランドではすでに『ビブリア古書堂の事件手帖』というメガヒットを出しており、狙いは見事に成功したといえる。  飽和状態だ粗製濫造だという声もあるが、ラノベという鉱脈は、まだまだ尽きないのかもしれない。
ラノベ

ラノベ同士の厚さ比較。右側のような分厚い作品もあり、「ラノベは読み応えがない」などとは、決して言えないものも存在している

― 30歳からのラノベ入門【3】 ―
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