ハリウッドも注目するラノベ、世界でブーム爆発か
―[30歳からのラノベ入門]―
一昔前に比べるとその勢いはやや落ち着いたものの、2000年代に急成長を遂げたライトノベル市場。「オタク向け」などという考えを改めねばならないほどのメガヒットを生み出している。もはや現代人の新たな教養になるかもしれない、ラノベの今を追った!
◆魅力的な主人公がいれば、それはもうライトノベル!?
そもそもラノベとは小説のジャンルではない。そう教えてくれたのは書評家の大森望氏。
「“ライトノベル”と謳われている(出版社の)小説レーベルがあるにすぎず、必ずしも内容のことを指してはいないんです。実際に作品を見ると、本格的なミステリーやSF、アクション物も多い」
ラノベを毛嫌いする人の多くは、固定観念によって新たな作品と出合う機会を失っているようだ。
「マンガ的な表紙だと一切買わない方っていますよね。でも、キャラクター駆動型のエンターテインメント=ライトノベルと捉えるなら、探偵物やアクション物など、ほとんどのエンターテインメントは今やライトノベル化しています。ですから、『相棒』が好きな人なら刑事物、剣豪物が好きなら時代小説のライトノベルを探して読んでいただければ、気に入った作品が見つかると思いますよ。幅広いのがライトノベルの特徴ですから」
では、その多様性がブームを生み出した理由なのだろうか。
「ライトノベルでは、大賞や入賞作品はすぐに出版、売れたらシリーズ化され、そのジャンルがさらに掘り下げられていきます。業界の動きが早くダイナミックで、読者が望む作品が次々に市場へ投入される形もできている。アニメ化すればさらに多くの読者を獲得できるし、限られたオタク層を相手にしているようでいて、実は大ヒットを生む可能性を常に秘めた市場なんです。さらにはトム・クルーズ主演で桜坂洋のライトノベル『All You Need Is Kill』が映像化され、来年3月に全米公開予定です。これで一気に海外でも火がつくかもしれない。そもそも、日本の小説がハリウッドの大作映画になった例なんてほとんどありません。ラノベにそれだけ大きな可能性があるということでしょう」
ハリウッドも注目するラノベ。世界中でブームが爆発する前に、食わず嫌いをやめてラノベに踏み出すのも悪くないかも。
【大森 望氏】
SFを中心に幅広い分野をカバーする評論家。特に『文学賞メッタ斬り!』シリーズ(豊崎由美と共著/ちくま文庫・パルコ出版)が有名。翻訳、アンソロジー編纂も手掛ける
取材・文/柿崎俊道 久保内信行 清水耕司 福田 悠 八木康晴(本誌)
撮影/難波雄史(本誌)
― 30歳からのラノベ入門【6】 ―
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