「モンサント保護法」と揶揄される法案が米国で成立。日本でも話題に
先月26日、米国で25万人もが撤回を請願していた法案が、オバマ大統領が署名したことで成立した。これが、米国内のみならず日本でも波紋を呼んでいる。
http://www.govtrack.us/congress/bills/113/hr933/text)。
問題となっているのは同法案の付加条項、735条(sec735)である。
簡単に言えば農作物流通における規制緩和と生産者保護を謳った法案で、病虫害や植物、害草などの移動を規定した植物防疫法の決定如何に関わらず、生産者側の要請に応じて農務長官は一時的に継続栽培の許可や規制除外とすることができるという内容である。
これがなぜ「モンサント保護法」と呼ばれ、非難されているのだろうか?
モンサントと言えば、GMO(遺伝子組み換え)作物や除草剤などで知られる世界屈指のバイオ科学メーカーである。しかし、同社が開発した遺伝子組換え作物の種子を購入した農家に対し、知的財産権を理由に自家採種を禁じるなどといった強引なやり方や、採取した種子が発芽しないようにする”ターミネーター遺伝子”を組み込んだ種子を開発しているなどとして批判されることが多い企業だ。また、カーギルなどの食物メジャーなどとの連携で、「世界の食糧を支配しようとしている」という陰謀論とセットで語られることも多い企業である。
反対派の言い分としては、これは食の安全性を保証する植物防疫法をや司法の権限を無視する内容で、仮にモンサントのGMO作物に何らかの危険性が認められたとしても、生産者=モンサントが農務長官に要請すれば販売や流通が規制を免れる、ということを挙げている。
また、同法案の起草に、モンサントの本拠地であるミズーリ州選出の議員で、モンサントが選挙費用を支援したとされているロイ・ブラントが関与している、とも反対派は主張しているようだ。
日本でも波紋を呼んでいるのは、仮にTPPが締結された場合、日本においても同法が日本に持ち込まれ、モンサントの思うがままにGMO作物を流通させられてしまうと考えられているからである。
確かに、一読すると反対派の主張にも納得してしまうが、同法案の原文にはモンサントのモの字もなく拡大解釈な感も否めない。また、同法案には但し書きもついており、規制除外や流通許可は最終的に植物防疫法の規制対象除外についての陳情の正当性をジャッジして結論が出るまでの一時的なものであり、農務長官が植物防疫法の権限を制限することはないと記載されている。
果たして同法案が「世界支配を目論むモンサント」を利するための法案なのか? それはわからない。
しかし、オバマが米国内25万人の撤回要請署名を無視してサインした法案であるということは覚えておいたほうがいいかもしれない。 <取材・文/ロナルド・ミヤギ(本誌特約)>
法案の名前はH.R. 933(包括予算割当法)。一部では「モンサント保護法」と揶揄されている法案だ。
実際に、公表されている法案を見てみよう(ハッシュタグ