【中国畜産業界の闇】3本足の鶏、死肉専門ブローカーも
上海市を流れる黄浦江で、伝染病で死亡した豚の死骸が6000頭以上、投棄されていた騒動は世界中で報じられ、大きな話題となった。黄浦江は上海市の水源になっており、市民らの不安が高まるなか、当局は畜産農家が遺棄したと発表した。
一方、遺棄したとされる農家のある村役場は「家畜の死骸回収は無料で行っており、投棄はありえない」と話し、「豚が死ぬと専門の人が引き取りにくる」という村民の証言も報道された。
近年、中国では家畜の不法投棄に関して厳罰が設けられているが、こうした大規模な不法投棄はなぜ起きたのか。トラブル孫悟空でおなじみ、ジャーナリストの周来友氏はこう指摘する。
「畜産農家としては伝染病の集団感染は、隠したい汚点だからです。また、富や子孫繁栄の象徴である豚が大量に死ぬということは、縁起が悪く忌み嫌われ、取引相手から敬遠される。不法投棄の犯人は誰にも知られないように処分したかったのでしょう」
しかし、家畜の不法投棄は、この国では日常茶飯事だ。広東省仏山市で貿易業を営む林田岳男さん(仮名・49歳)は話す。
「農村部を車で走っていたら、人だかりができていたので停車して近づいてみると、田んぼの真ん中に5匹の豚が横たわっていた。どの豚も虫の息で、野次馬は『病気の豚を誰かが捨てたんだろう』と話していました。それから2時間後、帰りに同じ場所を通ったら豚の姿はなかった。村人たちの胃袋の中に消えたんでしょう」
ところが、さらに悪質なケースも。病気に侵された家畜が一般の小売市場に出回っているからだ。
雲南省昆明市在住の自営業・玉田修三さん(仮名・37歳)が話す。
「市内の精肉店で、鶏肉を丸ごと1羽買ったら、なんと足が3本生えていた。中国ではたまにあるようで、中国人の妻は『ラッキー』と喜んでいましたが、抗生物質や成長促進剤を投与しすぎて奇形になってしまったんでしょうね。気持ち悪くなって捨てましたよ」
一方、深セン市の日本料理店経営の津森隆さん(仮名・44歳)によると、食肉業界には病死肉を専門に扱う違法業者が存在するという。
「たまに食肉業者が飛び込み営業に来ることがあるんですが、豚肉で相場の半額以下と明らかに安い価格を提示してくる連中がいる。従業員曰く、そうした業者が扱っているのは、病死や老衰死した豚肉とのことです」
昨年4月には深セン市で、病死した豚を一日平均で50頭加工し、約5tを食肉にして市場や食品メーカーに卸していた闇業者が摘発されている(『南方都市報』)。また、今年1月には河南省の大手精肉業者が、病死した鶏肉を加工して、中国国内のファストフード店に出荷していたことが明らかになった(『中国日報』)。ちなみにこの業者は、日本マクドナルドにも鶏肉を供給しており、日本人にとっても対岸の火事ではないのだ。
前出の周氏は、病死肉が蔓延する中国での“防衛策”についてこう話す。
「僕が子供の頃、豚や鶏は生きたものを買ってきて、自ら捌いたり、丸焼きにして食べていました。食に関していえば、その時代に戻ったほうが安全かもしれません」
でもそれ、日本人にはムリなんですけど……。 <取材・文/奥窪優木>
週刊SPA!連載 【中華人民毒報】
行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
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