ネットレビュアーから兼業作家へ【働きながら楽しく書き続ける道】
いいモノを求め、あるいは“ハズレ”を引かないため、参考になるのがネットのレビュー。が、誰もが“発信”できるゆえ、読むに値する情報の選別は大変!? そこで各界のプロもチェックする熱量高い素人レビューを紹介。レビュー事情は業界の鏡でもあった!?
◆レビューブログ⇒書籍を出版 働きながら楽しく書き続ける道
ネットの活動を足がかりにプロデビューする人も近年は多い。伊藤聡氏はサラリーマンをしながら32歳で始めたブログ『空中キャンプ』をきっかけに書籍も発表した。
「昔から映画や本が大好きで、誰に見せるわけでもなくノートに感想を書いていました。だからブログの存在を知ったときは、書くのが必然で。知らない人に自分の意見が届くのは本当に新鮮でした」
開設当初は読者もほぼゼロで、プロ志望も特になかったという。
「『面白いね』と言われれば万々歳。本が出たのはブログ開設から7年後ですが、それが目標だったわけではないです。尊敬する川勝正幸さんや宇多丸さんのように、好きなことを丁寧に紹介していきたいという気持ちで書いていました」
そのブログを綴るにあたり心がけるのは、「人を貶さず、ネガティブなことは書かない」ということ。
「過激にディスれば目立ちはしますが、さらにヒドいことを書き続けなきゃいけないし、周囲には口が悪くて攻撃的な人が集まってくる。ディスの才能がある人でないと精神的にも続かないと思います。一方、好きなものを褒め続ければ、似た趣味の人が集まり、憧れの人と会えることもある。作品の関係者はネットの感想を見ることが多いですから、『好き』と言えばその声は思いのほか届くんですよ」
伊藤氏は今もサラリーマンとして働きながら文筆活動をしている。
「最近もウディ・アレンの原稿のために作品はもちろん彼の自伝や暴露本まで資料を読み込みました。時間がないときは通勤電車でポータブルDVDプレーヤーで映画を見たり。時給換算すると正直、割に合いませんが(笑)、でも、お題を与えられて書くことは、自分のブログとは違う楽しさがある。専業の道に進むのもいいでしょうが、目標にするとつらくなるでしょうし、楽しく書き続けることかなと思っています」
【伊藤 聡氏】
ブログ『空中キャンプ』(http://d.hatena.ne.jp/zoot32/)で映画や海外文学のレビューを2004年から執筆。著書に『生きる技術は名作に学べ』。ウェブサイト『cakes』(https://cakes.mu)で連載中
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