【タクシー運転手たちのサービス競争】ビール、占い、ドラッグまでも振舞って…
02年の新道路運送法施行後、規制されていた新規参入や保有車両、運賃などの自由化が進み、車両台数が急増しているタクシー業界。車両の稼働率は低下し、ドライバーの営業収入も激減しているなか、営業成績を上げようと“私的サービス”に精を出すドライバーも多いという。その新手法を、ケース別に見ていこう。
●探偵顔負けの顧客リストが存在
一昨年頃から、タクシー会社の垣根を越えて、交通機関の情報をtwiiterやLINEなどのSNSで共有しながら売り上げをあげる“ツイドラ”と呼ばれるドライバーたちが増えている。個人ドライバーのHさん(45歳・タクシードライバー歴20年)も“ツイドラ”の一人だ。
「列車の遅延情報や交通事情、それとコンサートとかのイベント情報をスマホでチェックしてライバルに差をつけることができます。ただ、高齢のタクシードライバーが多いとはいえ、スマホを一人一台持つことが普通になった今、それだけでは通用しません。今は、どこの会社のだれが遠距離で深夜残業が多いとか、お客から得た情報をリスト化してドライバー仲間と共有してます。深夜残業でマンシュウ(注:1万円以上の乗車料金)が見込めるお客さんには、小分けにされたナッツとビールを名刺と一緒に渡したりもしますね。タクシーといってもサービス業ですから、そこまでしないと稼げません」
探偵顔負けの情報を活用するのみならず、最終的には自腹を切ってまで優良客を獲得するしかないのだ
●意外に好評な「ドライバー占い」
法人ドライバーのAさん(37歳・タクシードライバー歴8年)は、ある風変わりな私的サービスで営業成績を上げている。
「自分は口下手だから、乗車中の会話は苦手でした。ある時、泥酔したお客に『面白い話をしろ!』と絡まれて、急場しのぎで適当に姓名判断したら、ウケたんですよ。それから、お客と会話するために占いを始めました。それがなぜか当たるって評判になっちゃって……。名刺を渡して、占いをエサにリピート客を増やしてます。わざわざ、占いのために遠方から呼び出すお客さんもいますよ(笑)。昔ショーパブでモノマネ芸人をやっていた同僚にその話をしたら、『よし、じゃあ俺はモノマネで客を掴む』って張り切ってました」
疲れているときに好きでもないタレントのモノマネをされたらタマったものではないが、芸の精度によっては、ご贔屓さんを掴めるのかもしれない。
●違法な“私的サービス”も横行
昨年5月、都内でタクシーを“貸切”表示にし、覚せい剤の売人を同乗させ販売させていたドライバーが逮捕される事件が発生。車内の密室を利用して1日に10人程度に販売し、年間2000万円の売り上げをあげていた。が、「この手の違法ドライバーは多いですよ」としたり顔で語るのは、自身も違法行為に手を染める法人タクシーのSさん(32歳・タクシードライバー歴2年)。
「細々と売人として活動していたのですが、やはり一番のネックは売買時に捕まるリスク。そこで、売人の“隠れ蓑”としてタクシードライバーになることを思いつきました。移動中の職質も少ないし、意外にも新規開拓にも繋がるんです。その手口は、ホテル街を流して男性客にバイアグラなどのED治療薬を初回無料で提供して連絡先を交換。その後、女性の斡旋をしたり、危険ドラックから始まって大麻、覚せい剤と教え込んで客を育てる――ってのが一連の流れですね。太客を掴むことができれば、それだけで月10万円相当の副収入を得られます。“客”の送迎も増えるので、本業(タクシー)の営業成績も上がり一石二鳥です(笑)」
個々のドライバーが繰り広げるサービス合戦は乗客には嬉しい限り。だが、違法なサービスの斡旋は、くれぐれも慎んでいただきたい。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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