ミスチルの素顔を撮り続ける写真家・薮田修身は“容赦がない人”
―[山田ゴメス]―
1999年NYのレコーディングスタジオで出会った写真家・薮田修身とMr.Children。2004年の撮影から始まり、アーティスト写真、アルバムジャケット、LIVEを撮り続け、プライベートでも深い親交を築いてきた彼ら。最初の撮影からMr.Childrenと重ねてきた時は気づけば11年。薮田修身だからこそ写し出し捉えてきた4人の素顔、誰も目にしたことのないMr.Childrenが、そこにはいた……。
僕と写真家・薮田修身とは知り合いだ。薮田修身は僕、山田ゴメスが所属している草野球チームの監督である。だから、僕からすれば薮田修身は「薮田監督」だ。
これまで、薮田監督とは仕事で現場を共にする機会がなかったので、フォトグラファーとしての薮田監督の顔を、まだ僕はまったく知らない。
ただ、薮田監督の仕事ぶりを噂で耳にしたことは何度かある。
とにかく、仕事はめっぽう早いと聞く。
予算内の機材と予定内の時間で、きっちりと収めてくれる“プロフェッショナル”であるという(不景気が叫ばれる出版業界では、とくにありがたい存在だ)。ファインダーを覗かないままシャッターを切るなんてこともしょっちゅうで、周囲のスタッフは、しばし不安にもなるらしい。
薮田監督には「容赦」という言葉が無い。
そして、容赦無い性格とは写真家にとって、じつは重要な資質なのかもしれない。容赦から生じる“躊躇”は、時にコンマ数秒のシャッターチャンスをも逃してしまうからである。
そんな薮田監督の容赦無さは、野球での采配でも同様だ。
言いたいことを言わずに、やりたいことをやらずに溜めるタイプとはもっともかけ離れたヒトなので、僕がファーストを守っているとき、ライト前ヒットを打たれてカバーを怠れば「ゴメス! 何年野球やってんだ!!」と叱咤され、ヒットエンドランの場面でフライを打ち上げてしまったり、たとえヒットを打ってもバントのサインを見逃したりしていたら即交代……。
どうしても勝ちたい試合では、僕のようなスタメン当落ギリギリの線にいる選手は最後までベンチというケースもなくはない。
薮田監督は、集中のポイントが常人と食い違っているのか、とにかく物忘れが激しい。
でも、そういうことは不思議と覚えていて、試合が終わったあと、かならず「今日は出られなくてゴメンね」と一言声を掛けてくれる。それだけじゃなく、次の試合には僕よりも上手な選手をベンチに置いてでもスタメンで起用してくれたりもする。犠牲フライを打った次の日、唐突に「ナイスバッティング」とだけLINEで送られてきて、その不思議なタイミングに戸惑ってしまう、なんてこともあった。
もちろん僕だけに、ではなく選手ひとり一人に、まんべんのない薮田監督なりの、いや、ならではの“観察”と“法則”が常に注がれている。
そう。薮田監督の采配は容赦が無くて愛がある。
おそらく、Mr.Childrenと向かい合って“仕事”をしているときも、おかまいなしに思いついたことをぽろっと口にし、噂に違わぬスピード感と、野球での采配と寸分変わらないスタンスでシャッターを切っているに違いない、と確信できる写真展。圧倒的な物量と、メンバーのあまりに無防備な笑顔……これだけでもう、“解説”としては充分なのではなかろうか?
<取材・文/山田ゴメス>
●薮田修身 写真展『BLACK BOX –unpainted face of Mr.Children-』
会場:PARCO MUSEUM(パルコミュージアム)渋谷パルコ パート1/3F 期間:2015年5月22日 (金)〜2015年6月15日(月) 10:00~21:00(入場は閉場の30分前まで。最終日は18:00閉場) 入場料:一般500円・18歳以下無料 問:03-3477-5873(パルコミュージアム) 公式サイト:http://blackbox-osamiyabuta.com
●薮田修身 写真集『BLACK BOX –unpainted face of Mr.Children-』
3,500円(税別)。写真展会場で展示する作品に加え、この写真集でしか見られない写真も多数収録。(※渋谷会場での購入はお一人様につき2冊まで)写真展会場にて先行発売するほか、オンラインショップでも販売予定。販売スケジュールに関しては、公式サイトにて詳細。
【薮田修身】
埼玉県出身。斎藤一男氏へ師事。W所属。ファッションフォトグラファーとして、雑誌、カタログ、広告、ムービー等を中心に活動。ライフワークとして個人の作品撮影も精力的に行っている。著書『Tokyo Bunny Girls』など。 http://www.wtokyo.co.jp/artist/osami-yabuta http://www.osamiyabuta.com大阪府生まれ。年齢非公開。関西大学経済学部卒業後、大手画材屋勤務を経てフリーランスに。エロからファッション・学年誌・音楽&美術評論・人工衛星・AI、さらには漫画原作…まで、記名・無記名、紙・ネットを問わず、偏った幅広さを持ち味としながら、草野球をこよなく愛し、年間80試合以上に出場するライター兼コラムニスト&イラストレーターであり、「ネットニュースパトローラー(NNP)」の肩書きも併せ持つ。『「モテ」と「非モテ」の脳科学~おじさんの恋はなぜ報われないのか~』(ワニブックスPLUS新書)ほか、著書は覆面のものを含めると50冊を超える。保有資格は「HSP(ハイリー・センシテブ・パーソンズ)カウンセラー」「温泉マイスター」「合コンマスター」など
『Tokyo Bunny Girls』 2005年より、カメラマン薮田修身氏が仕事の合間を縫って知人のモデルを中心にプライベートなポートフォリオ制作を敢行 |
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