高速道路オタクが造形美に萌える「首都高横浜北線」が真価を発揮するのは3年半後
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
3月は年度末。高速道路の新規路線開通が集中する時期でもあった。なぜ年度末に開通するかというと、高速道路会社(NEXCOや首都高、阪高)と高速道路保有機構との協定では、開通期限がすべて「〇〇年度中」とされているからだ。高速道路会社側は、なんらかの理由で開通が遅れると、一種のペナルティ料を払わなくてはならない。よって当該年度末を目指して工事が行われ、2月や3月に駆け込み開通が連発される。
そんななか首都高速道路株式会社は3月18日、予定通り横浜北線を開通させた。横浜北線は、首都高横羽線と第三京浜を接続する路線で、延長は8.2km。うちトンネル区間が約5.9kmだ。
首都高はこの横浜北線について、「新横浜を中心とする横浜市北部と横浜港までの所要時間の短縮や定時制の確保が期待でき、広域的な交通利便性が向上する。新横浜駅から羽田の空港中央出入口までの所要時間は、現在の40分から30分に短縮される」と、その意義を強調している。
しかし、現状ではこの横浜北線に大きな意味はない。横羽線と第三京浜はすでに首都高三ツ沢線で接続されているし、目立った渋滞もないからだ。
首都高側は、横浜北線の当面の交通量を「1日3万台弱」と予測したが、現在のところその半分、1.5万台程度にとどまっている。実際走ってみてもガラガラで、まばらな通行車両たちは、新規開通路線のまっさらな舗装を噛みしめるようにのんびり走っていた。
1.5万台/日という利用台数は、首都高としては非常に少ない。横羽線は最大で9万台/日、3号渋谷線が同11万台/日。首都高最大の交通量を誇る湾岸線お台場周辺は同15万台/日だ。1.5万台という数字は、2月に開通した圏央道茨城県区間(ド田舎)の約2万台/日よりも少ないほどである。
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ただこの横浜北線も、3年半後(東京オリンピック前)に横浜北西線が開通し、横浜青葉JCTで東名に接続されると、飛躍的に利用価値が高まることになる。東名と横浜市中心部とは現在、保土ヶ谷パイパスでしかつながっておらず、激しい渋滞が恒常化しているが、横浜北西線と横浜北線が連結されれば、その代替路として機能するからだ。
首都高の予測では、その時の交通量は5.5万台/日。この開通によって保土ヶ谷パイパスの交通量が約1割(2万台程度)減れば、渋滞は半分未満になるはずだ。しかし現状は、フルJCT化した生麦JCTや、二重螺旋構造が見事な港北JCTの造形美に萌えるといった高速道路オタク的目的以外、個人的には利用価値を感じない。
ちなみに5.9kmのトンネル区間は、避難路が本線の下にあり、すべり台で降りる構造になっている。
トンネル内では「非常口はすべり台式」と電光掲示板に繰り返し表示されるので、ついすべりたくなるが、言うまでもなく緊急時以外に路肩にクルマを止めたり、非常口のすべり台をすべり降りるのは厳禁だ。
取材・文・写真/清水草一(道路交通ジャーナリスト)
【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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