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貧困化する歌舞伎町のなかで「病み(闇)」に抗う者のリアル 佐々木チワワ×真鍋昌平

漫画家・真鍋昌平氏と、ライター・佐々木チワワ氏による“歌舞伎町の住人たち”をテーマにした対談が実現! 後編では貧困化が進む彼・彼女たちらはいかに「病」と戦うのか。不夜城のリアルに迫る――。

貧困化する歌舞伎町のなかで「病み(闇)」に抗う者のリアル

ぴえん

佐々木チワワ氏(左)、真鍋昌平氏

世代もジャンルも超えながら同じ世界を眺める、漫画家・真鍋昌平と現役女子大生ライター・佐々木チワワ。後編のテーマは、ぴえん系女子や歌舞伎町の貧困。お互いの心の底に迫るようなディープな内容へと話は及んだ。 【前編を読む】⇒モラルや正論が通じない「ぴえん系」カルチャーの実態とは?佐々木チワワ×真鍋昌平 ――新型コロナによって生活困窮者の増加は深刻化しました。歌舞伎町やぴえん系女子を取材するなかでの体感はありましたか。 真鍋:アウトローの方々に関しては、逆に景気がよさそうだったんです。特に半グレ的な人種はつぶれた店の跡地にバンバン焼き肉屋やら寿司屋をつくったり、「キャバクラ代が浮いてカネの使い道がないよ」と会うたびに時計が変わっているような方が多く、ほかとのギャップで余計に際立ちましたね。 佐々木:歌舞伎町のホストも繁盛店が多く、今年は史上最高売り上げの4億円プレーヤーが誕生する噂もある。その一方で、コロナ禍で収入が落ちた風俗嬢の取材協力者をツイッターで募集したところ、一日で30~40人から連絡があって。5000円の謝礼でそこまで反響があったのは驚きました。 真鍋:5000円でもありがたいですよね。自分が取材したぴえん系女子も家賃が支払えなくなって友達の家に転がり込み、そこでポコチャ(配信アプリ)をやりながら生活していて。一日十数時間、起きている時間のほとんどを晒して「花火(投げ銭)ください!」と時折お願いして、ようやく日々の食事にありつける様子でした。

歌舞伎町で貧困化したら抜け出すのは難しい(佐々木)

佐々木:トー横キッズの配信者たちもそれに似ていて、PayPayのQRコードを貼るだけですぐに1000円くらいなら送ってくれるファンを抱えています。最高で5万円貰ったコもいるんですが、限られた世界のなかでこそ支持されているわけで、一人暮らしの費用を貯めたりして現在の環境から抜け出すのは簡単ではない。 真鍋:それとは逆に、今まで稼げていたコは収入が落ちても生活水準を落とせずに破綻する例もありますよね。自分はコロナ禍のある時期から急に「クレジットカードの代金が支払えずに困ってるんですけど」的な連絡が増えたのですが、何に使ったのか聞いても大体みんな「よく覚えてないんです」と。で、久しぶりに会ってみると(整形して)だいぶ顔が変わっていたり(笑)。 佐々木:特に歌舞伎町では「お金を使わなければ価値がない」思考に陥りやすい。それに、男性客とホストにしか会わない生活をしていると基本的に「かわいい」としか言われないので、美的感覚まで狂ってしまうのはすごく怖いと思っています。たまに昼職の友人と集まっても、会話内容や立ち居振る舞いで浮いてしまうと逆に敬遠されますから。 真鍋:なるほど、そうなるとますます歌舞伎町に染まるしかない。その点、若くして自分がやるべきことを見つけて、ホスト通いまで卒業されたチワワさんはすごい。 佐々木:ホストは半分取材も兼ねているので、本当に嗜む程度には顔を出していまして。自然と創作ネタになるエモい台詞を吐いてくれる人ばかりを指名しているんですが、その一方で『九条の大罪』を読んで「○○君がいればどうでもいい!」と思う相手に出会いたい気持ちが強くなって。 真鍋:それこそ絶対その本人にとっては幸せな瞬間ですよね。 佐々木:そうなんですよ、潤いが欲しいんです。なので、最近は「俺のためにライターなんか辞めて風俗やってくれよ」的な営業も久しぶりに受け、どうしよう!と悩んでみたいんです(笑)。
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自殺者の取材で闇にのまれ自分も死にたくなった(真鍋氏)
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現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki

「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認

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