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俺の夜

第百七夜【後編】

「東京か、懐かしいわ。私がいたのは15年くらい前だったかしら」

 妙齢の美女・久恵ママの一代記に心を奪われる。O氏の地元友人も合流し、盛り上がりは最高潮に。このまま足に根を生やして飲みたい衝動にも駆られるが、店をあとに。旅の醍醐味は”はしご酒”。時計の針は12時を過ぎたばかり。ここからが本番である。

吉幾三に癒される!? 東北娘の純情小唄

 次に向かったのは同じく六日町にある「ジャスマック八戸館」。ビルはすべてスナックで埋め尽くされた”男の夢の城”である。

「東京のお客さんは珍しいから、値段は最初に交渉するんだよ」という久恵ママのアドバイスをもとに、気の向くままに扉を開ける。

 バルファン(5F)、ルイ(1F)、千佳(2F)。訪れたお店は全部で3軒。客単価は飲み放題で3000円程度。女のコのドリンク込みというのが、余計な虚栄心と懐の心配をせずに飲める。

 どのお店にも人懐っこい女のコと情に厚いママがいて盛り上げてくれる。あき竹城のようなズブズブの東北訛りではなく、意外と標準語に近いのがスギナミ的には少々残念だったが、それを帳消しにする東北娘独特のこんなお話も。

「休日はひとり部屋の中で吉さんの声と歌詞を聞いてるのが一番癒される」(バルファン・M嬢)

 そう、地元スナック嬢のアロマミュージックはいきものがかりではなく、やはり吉幾三。

♪ 酔いたくて泣きたくて ふるえるくちびる そばに来て少しでも わがまま聞いて

 この歌詞に共鳴できる20代女子はそういない。シメに訪れた陸奥湊で、刺し身と銀シャリを頰張りながら、そんな東北人情の温もりをしみじみと振り返るのであった。

スギナミ流
八戸スナック回遊

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繁華街の中心部にドーンとそびえ立つ、ジャスマック八戸館。
すべてのお店を回るのに1か月はかかる

◆2軒目

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黒スーツが凛々しい「バルファン」(5F)の千昌ママ。
「新青森に人気を奪われないよう、八戸をもっと盛り上げていきます」

◆4軒目

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「ルイ」(1F)にて。外国人っぽい顔立ち(東北娘になぜか多い)のコが多数。
写真左は上機嫌にはしゃぐ、るい子ママによるカラオケオンステージ

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「八戸のシメはラーメンより朝市」(スナック嬢)とのことで陸奥湊を訪れる。
とれたての海産物を購入→市場の奥でご飯(100円)と一緒に食べられる

協力/猪口貴裕

第百七夜【前編】

雪の下北 はぐれ鳥
東北新幹線開通で沸き上がる青森の夜を堪能

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「年末は故郷に帰るかな。母ちゃ、元気にしでっだろうか」

 阿佐ヶ谷の大衆酒場「K」の看板娘・青森出身のマリアちゃん(37歳)がカウンター奥のブラウン管を見ながらポツリと呟いていた。テレビ画面には駅員に扮した吉幾三の姿。「東北新幹線 新青森駅開業」のキャンペーンCMだった。

 東北には縁もゆかりもないスギナミではあるが、東北娘には親しみを感じてしまう。色白肌、茶がかった瞳。そして何より、あの微妙に隠しきれない東北訛りを聞いていると、たとえ東京の”垢”がたまったキャバ嬢の営業トークでも、騙されているようには思えないから不思議なものである。

「青森行ったことないの? えっ東北も? ばんかくせ(バカじゃない?)。新幹線でちゃちゃっと行けるじゃないの」

 そんなマリアちゃんの言葉に後押しされた僕は、気がつけば東北新幹線・はやて34号の車上の人となっていた。

フラリ訪れた北酒場で地元客と一緒に賑わう

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 新幹線に乗って一路青森へ――といったところで青森は広い。真っ当な旅ルポとしては、新路線が開通された新青森駅を目指すのが本筋ではあるが、「朝までズブズブに飲める」が信条の「俺の夜」的には、やはり県内で一番盛り上がっている繁華街へと向かいたい。青森出身の編集部員、在住友人らへの下調べの結果、その目的地は港町・八戸となった。

 平日夜、八戸駅に降り立った僕と夜遊び仲間のI氏。飲食店が集まる六日町付近へはタクシーで15分。まずは腹ごしらえのため、地元サラリーマン&漁師御用達の「みろく横丁」へ向かった。

 オープンな屋台スタイルの店舗が軒を連ねる。寒空の下、郷土鍋から立ち上る湯気と客の熱気が充満した店内を眺めつつ小路を進むと、「お二人さん、いらっしゃい。席、二つ空けときましたよ」と快活な呼びかけ。声の主は「ねね」の若おかみ・富士子さん。

「東京から? コッチは寒いでしょ。温まって精のつくもん用意するからゆっくりしてって」

 さば、ほっけ、いか、焼きうに。寒さで硬直した頰も思わず緩む、とれたて魚介類を肴に、地酒を熱燗でグビグビと呑む。

「兄ちゃんたち、八戸は馬刺しもいけっど。八戸の”戸”ってのは牧場のことで、ここらは軍用馬の産地だったんだから」

 てな具合に、たまたま隣り合った地元客のO氏とも意気投合。

「おし。とっておきのスナック行こか。お化け屋敷かもしれんけど、勘弁な。ガッハハハ」

 豪快に笑うO氏の水先案内で、まずはスナック「リバティー」へ。

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東京―新青森間は最短3時間20分。
青森中心部の盛り上がりにも期待したい!

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みろく横丁「ねね」にて。若おかみの一人・富士子さんにお酌をしてもらい、
銘酒「三戸のどんべり」を堪能する。寒がりなスギナミのために
ちゃんちゃんこを用意してくれるなど、粋なサービスが嬉しい

協力/猪口貴裕

第百一夜【前編】

“食欲の秋”にオススメしたい
女のコと飲めて満腹になれるお店

 食べ盛りの男子が集う学生街につきものなのが、早い、安い、ボリューム満点がウリの定食屋の存在。かくいうスギナミも当時は、「ココイチカレー1300g20分完食」の肩書きをひっさげ、鉄の胃袋を持つ運動部の猛者どもを相手に、大食いバトルを繰り広げたものだった。しかしこれも時代の変化か、学生時代お世話になった定食屋のおばちゃんが、先日、こんなボヤキを口にしていたのだ。

「最近の学生さん、ご飯大盛りにしてくれないのよ。もっとヘルシーなメニューを増やしてほしい、なんて言うコもいるしねぇ」

 草食男子ならぬ小食男子が増えていたとは……。映画『トラック野郎』で菅原文太扮する星桃次郎の、どんぶり飯をかっこむ姿にこそ男の美学があると信じてやまない僕は、「食べないと嘆くおばちゃん」→「おばちゃん……とはいえ女は女」→「小食男は女に好かれない」という強引な三段論法を打ち立ててみた。

 女のコの前で男の食べっぷりを見せれば、「ウソ? すごくワイルドでかっこいい。スイーツに紅茶の男なんてポイ捨てね」となるはずなのだ。

 そんな妄想に思いを巡らす僕の耳に入ってきたのは、女のコとお酒を飲めて食事も楽しめるお店の存在。早速、胃薬を懐中深くに忍ばせ、まずは昼下がりの赤坂へと向かった。

食欲と女のコ。ダブルで満たす快感

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 最初に訪れたのは、食べ放題のビュッフェを楽しめるキャンパスカフェ「BADD GIRLS 100%」。空腹状態でハウスボトルを飲み続ける……なんて辛さもなく、一次会から楽しむことのできる夜の名店だ。

「今日は秋の味覚が揃ってるみたいですよ、一緒に取りにいこ!」

席につくなりビュッフェコーナーへエスコートしてくれたのは、キュートな笑顔が眩しい高平かおちゃん。「この松茸が入った炊き込みご飯が人気……あっカキフライもおいしそ~」なんておしゃべりしつつ一緒に取り分けていると、ちょっとしたカップル気分を味わえる……って、え~っと、当初の目的ってなんだったっけ?

「あっはは。でも確かに、私は男の人にはガツガツ食べてほしいな。女のコの前でサラダだけとかって、ちょっと頼りない気がする」

そんな藤田りこちゃんのエールに勇気をもらいギアをチェンジ。お皿をかかえて好物のカキフライを頬張り始めると、隣の井上なつこちゃんから、「あれれ? スギナミさん、無口になってません? 女のコはもっとおしゃべりも楽しみたいんだから」とのお言葉。

男っぷりも度が過ぎれば単なる食いしん坊。かわいこちゃん揃いで浮き足立った胸の内を見透かされぬよう、次なる目的地・池袋へと向かった。

【BADD GIRLS 100%】

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在籍するコは全員現役の女子大生。
(左から)高平かお(22歳)、井上なつこ(22歳)、藤田りこ(22歳)。3人揃って4年生だ

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住:港区赤坂3-15-13冨司ビルB1F
電:03-5570-4420
休:日祝
営:16時半~ラスト
料:4410円(16時半~20時/70分)、1万710円(20時~ラスト/70分)
こだわりシェフの本格料理を楽しめるビュッフェはオールタイム食べ放題。
六本木、銀座にも系列店あり

協力/猪口貴裕 撮影/石川真魚

第百一夜【後編】

訪れたのは女のコがしゃぶしゃぶを食べさせてくれる「ショムニ」というお店。高級官僚がお好きなソレとは違い(ちと古いか?)、同店ではさまざまなコスプレ衣装をしたギャルがご奉仕してくれる。 「いらっしゃいませ~」 席についたの […]

第百夜【後編】

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