オフィス街・八重洲にある、ひとり日本酒デビューに最適な老舗酒場

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初心者にも心優しい、正統派な日本酒が嗜める老舗酒場

 普段はワインばかりで、自ら進んで頼むことはない日本酒。学生時代の記憶から、〝酔っぱらうための酒〟というイメージが根づいてしまい、正直良い思い出はないが、これを機においしい日本酒で飲み方を覚えて嫌な思い出を払拭したい。
 
 そこで今回は、豊富な日本酒ラインナップが自慢の居酒屋「ふくべ」へ。思い切って老舗酒場の敷居をまたいだ。

異彩を放つ巨大な四斗樽に心ひかれる

3102 店内は1階がカウンターの9席、2階には団体向けテーブル席が設けられている。バックバーには42種の日本酒がズラリ。中でもカウンター奥に鎮座する菊正宗の四斗樽が、ひときわ存在感を放っていた。

 創業84年。現在は創業者の孫にあたる三代目が店主を務める。

「初代は、地方から出てくる労働者の方たちのために『少しでも故郷を思い出して仕事をがんばってもらいたい』という思いで立ち飲み屋から始めたといいます。そのため、ウチでは全国の日本酒を取り揃えています」

 これだけ種類豊富となれば、どれから飲み始めればいいのか見当がつかない。そこで三代目におすすめを伺った。

「そう聞かれたら全部おすすめですね(笑)。なので、重めかさっぱりめ、甘めか辛口か――というように、お好みをお伝えいただければそれに応じてお酒をお出ししますよ」

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「菊姫 菊姫」(石川)お燗で味わえば、香り高さが際立つ 一杯850円。昭和58年に日本酒業界初の「山廃仕込」表示の純米酒として発売。ナッツを連想する芳醇な香りが特徴

 
3181 まずは、自分好みの“重めで辛口”をリクエスト。すると三代目が純米酒の菊姫を取り出し、徳利に注いでくれた。

「お燗で飲むのがおすすめですが、まずは常温でお酒本来の味を試してみてください」

 おちょこに注いで一口飲むと、華やかななかにも切れ味のある風味が口いっぱいに広がった。ここで日本酒に合いそうな、たらこのちょい焼きとさつま揚げをオーダー。半生状態のたらこは塩気が効いていて酒が進む。

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3050 今度は前々から気になっていた菊正宗の四斗樽に挑戦することにした。

「菊正宗は冷酒と常温とお燗でお出ししています。まずは、冷酒とぬる燗を試してみてはどうですか」

 三代目に勧められるまま、飲み比べをしてみる。冷酒はキリッとしたのど越しで飲みやすい。かすかに樽の香りも感じられる。続いて40℃に温められたぬる燗に口をつけると、冷酒よりもさらに樽の香りが深くなり、味に奥行きが生まれた。

「樽酒は日々熟成されるので、量が底に近づくほど樽の風味が強くなります。一升瓶40本分が入っている四斗樽は、当店では約1週間ほどで空になる人気のお酒です」

3143 普段は常連と新規客がほぼ半々の割合で訪れるというふくべ。気さくな店主との会話を楽しみながら日本酒の知識も学べる。ひとり日本酒飲みデビューに最適なお店だった。

「ふくべ」
住:東京都中央区八重洲1-4-5
営:16:30~22:30
休:土日
料:日本酒は一杯850円~、菊正宗樽酒お土産用2000円、おでん830円、しめ鯖780円、くさや830円。週末はカウンター席がすぐ埋まるため、事前予約がベスト

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「北島酒造 北島」(滋賀)これぞ日本酒!ガツンとした味わい 一杯850円。「飲めば食べたくなる、食べたら飲みたくなる」がコンセプトの、食中酒向きの逸品


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「朝日酒造 朝日山 千寿盃」(新潟)すっきりとした軽い口当たり aた酒造会社の一品。淡麗辛口の特別本醸造酒。常温でも燗でも幅広い飲み方で楽しめる


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「土田酒造 土田」(群馬)フルーティな飲み口は女子ウケ必至 一杯850円。冷酒で提供。江戸時代の製法を貫き、地元群馬のお米をできるだけ磨かずに醸して製造するこだわり

撮影/鈴木大喜

メルロー 無類の酒好き女子。特にワインには目がない。自分よりも酒が強い男性に惹かれやすい
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