第五十一夜【前編】

あの”事件”の舞台

渋谷のカオス百軒店の明と暗を探険する


【担当記者:苫米地】

 21時。駅を抜け、人でごったがえすスクランブル交差点を縫うように進む。坂を上がり「マルキュー」を右手に見ながら、だらだら坂を上る。ここに来るまで幅を利かせていた個性的なファッションに身をつつんだ若者たちは姿を消し、目つきの鋭い黒スーツや「マッサージイカガデスカ?」、酔客の袖を引く中国語訛りの小姐の声が聞こえると、こぢんまりとしたアーチが現れる。

「百軒店」……「ひゃっけんだな」と呼ばれるここは、この夏、世間を騒然とさせた「夫婦の事件」の発端となった場所だ。夫はこの場所で職務質問を受け、呼び出された妻はその場から姿を消した……

あれから2か月。かつては「渋谷一の歓楽街」も、その名とは裏腹に店は次々と潰れ、衰退の一途だった。久しぶりに聞いた「百軒店」の響きに妙な胸騒ぎを覚え、この地の今を探ってみた。

かつての歓楽街は暗闇が支配…

 アーチをくぐるとすぐに現れるのは「ヘッドショップ」と呼ばれる「喫煙具店」。あの夫も愛好したかも知れない法律スレスレの”アロマオイル”が売られている。麻の絵が描かれた冷蔵庫から小瓶を取り出すと、小さく頷く店員。効能を聞くも「わかりませんねぇ……」とけんもほろろだ。

食い下がると「ぶっちゃけ、詳しいことは言えないんですよ。法律に触れちゃうんで」と睨まれた。

あの事件以降、商売に支障が出ているようだ。冷たい視線を浴びながら店を出ると、向かいには百軒店のシンボル「道頓堀劇場」が。しかし、どうも様子がおかしい。近づいてみると、入り口にはデカデカと「営業停止」の文字。「遊びどう?」と声を掛けてきたポン引きに聞けば、「公然猥褻でガサが入った」とか。老舗の名門ストリップ劇場も受難だ。次々と声を掛けてくるポン引きをかわしながら、さらに奥に進むと、それぞれ創業83年の長い歴史を持つ名曲喫茶「ライオン」と、、創業50年のカレー店「ムルギー」がひっそりと佇む。周囲には風俗店の受付とおぼしきドアが並び、強面の男が外を窺っている。あの夫はこの辺りの馴染みのホテトルに向かう途中で職務質問に遭ったとか。




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歌舞伎町とは面積も規模も比べものにならないほど小さい百軒店。しかし、ラブ
ホテルとオシャレな喫茶店に挟まれた神社が突如現れたり、アダルトショップと
クラブが隣接していたりと、歌舞伎町以上のカオスが展開しており、なかなか楽しい





協力/O氏(夜遊びガイド)
撮影/桜井健司

苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
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