緊急事態宣言もふた月目。夜、ふらりと繁華街に飲みに行くことも叶わず、逆に「もう酒飲まなくてもいいんじゃないか」と思えるようになってきた俺がいる。
浜松町の片隅で看板女優が待ってます
夕方、山手線の浜松町で電車を降り、いつもと違う道をトボトボ、編集部に向かっていると、妙な建物を発見。白くチープな外観は、良く言えば「手作り感」、悪く言えば「掘っ立て小屋感」。「東京果樹園」とカラフルに筆書きされた看板に、ビニールの屋根の木造テラス、間口は広いが奥行きのなさすぎる店舗。
八百屋なのか? と思って近づくと「レモンサワー」と書かれた黄色い提灯が揺れている。素通しのガラスから見えるのはカウンターと白木の板のお品書き。レモンや文旦がカウンターに並んでいる。ジューススタンド? 近づいていくと、ガラスの奥から女のコが手招きしているではないか。
笑顔で迎えてくれたのは、ここを切り盛りする店長の逢澤みちるさん。聞けば、果汁を生搾りするサワーを中心とした立ち飲みで、オープンしてもうすぐ2年がたつという。編集部の目と鼻の先にありながら全く気づかなかったなんて……。再開発が盛んな浜松町でも、同店のある場所は浜松町の片隅、屋形船の乗り場がある船宿街。マニア好きのする立地である。
実はメディア初登場そこにはワケが……己の勘の悪さを嘆いていると、「マスコミ取材には一切応じてこなかったので、知られていないのも当然です。自分たちの力だけでお店を作って、宣伝も自分たちでやるという信念で……」
なんとこの手作り感溢れる外観や内装は、店長以下、従業員の女のコたちが作ったものだという。
「元は八百屋さんだった物件を自分たちでリノベーションしました」
まるで学園祭の模擬店のようなノリ。店長以下、女のコたちは自分たちの“仕事”に誇らしげ。さっそく名物というレモンサワー(500円)を所望する。ハンドジューサーに広島県瀬戸内産のレモンをセット、ギュウっと搾る。玄人好きする宝焼酎を強めの炭酸で割ったレモンサワーが届いた。
フルーティな生搾りサワーと美女のトークで飲みすぎて……グッと飲むと実にフルーティ。しっかり酒も効いていて、安居酒屋にある人工的な酸味とは大違い。これは飲みすぎてしまいそう。
「私を含め、女のコ全員が女優なんです。自分たちの舞台や映画の宣伝もしています。稽古帰りにここに出勤して帰るコもいます」
店の客として来て居心地のよさに思わず働いてしまったという酒井比那さんが2杯目のサワーを作ってくれた。女のコたちの舞台等の話を聞きながら飲む酒は、格別。会社を抜け出して通おう。 【東京果樹園生搾りBAR Koi Koi】住:東京都港区浜松町2-12-6
電:080-3214-8864
営:18:00~24:00(現在は17:00~20:00)
休:土・日・祝
料:生搾りサワー500円~、瓶ビール500円(お通しチャージ500円)
●果物はここから豊洲に移転した「元八百屋」から仕入れる(@koikoi_bar)
撮影/渡辺秀之
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苫米地 某実話誌で裏風俗潜入記者として足掛け5年。新天地でヌキを封印。好きなタイプは人妻
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