トランプの中国嫌悪は本物!? “微表情”に見るアメリカ大統領選候補の本音

 微表情とは、抑制された本音や「真の感情」が一瞬で顔に表れて消え去る表情のこと。

 その多くは0.2秒以内に行われるため目視で認識することが困難で、通常の会話では8~9割が見落とされてしまう(※「微表情」にあたる英語表記は、“micro expression”、”subtle expression”、“mini expression”などの用語に大別され、細かく分類されるがここでは総じて「微表情」とする)

 今回は次期アメリカ大統領有力候補として並び立つドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの微表情から窺い知る本音を、日本国内にまだ数名しかいないと言われる認定FACS(Facial Action Cording System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人、清水建二氏に分析してもらった。

 使用したのは、以下のスーパーチューズデー演説。

⇒【動画】Donald Trump Super Tuesday press conference (Entire speech)
 http://www.youtube.com/watch?v=qzEAyM0LK2U




「トランプ候補は主張自体は誠実かつストレートで、良くも悪くも正直です。ただ、所々に認識や感情のブレがある。個々の政策に対する思い入れの強弱があり、大風呂敷を広げつつも具体策がない場合はあからさまに顔に出る。台本にないことを言っている可能性も大です」

 ここまでは想定の範囲内ともいえるが、面白いのはいつもトランプを補佐している、ニュージャージー州のクリス・クリスティー知事と連携がまるで取れていない点だ。

「ここでは、背後で見守るクリスの表情に注目です。彼はトランプの発言を覚えておく係なのかもしれませんが、最中に眉間にしわを寄せて口が開くのは、トランプの発言に当惑しつつ、注意深く聴いている状態。集中していないといけないほど、事前にトランプが何を話すか予測できていない状態を示しています」

 そして10:59では、トランプが女性保護問題に対する姿勢が露呈する。

「『(女性保護は)私にとって重要です』と言ったほんの一瞬、肩が上がる。これはシュラッグというアメリカ人特有の微動作で、『not sure』と言いたい場合にこれをやる。つまり、実はそんなに重要視はしていないことがバレバレです」

 次に、18:07ではメキシコに対する嫌悪感が顕著に表れるが、ここでもブレが生じているという。

「メキシコへの政策はかなり強硬にやっていきたい思いが非常に強いのですが、『メキシコには対価を100%支払わせる』と大見得を切りつつ、舌を出す。これは内心、『言いすぎたかな』と思っていることの表れ。そして面白いことに、クリスもシンクロするように舌を出す。『そりゃ無理だろ』と思っているのでしょうね」

 たいそうな理想と信念を掲げているが、具体策になると自信のなさが露呈するトランプ。大統領に就任したとしても、政策実行能力には不安が残る。また、中国や日本への厳しい発言も目立つが本音はいかに?

 そこで、有名な「China」発言シーンだけを集めたMAD動画を分析してもらった。

⇒【動画】Donald Trump Says “China”
 https://www.youtube.com/watch?v=RDrfE9I8_hs




「『China』と言っているときの場面集ですが、どれも『怒り』『嫌悪』『悲しみ』といったネガティブな微表情が多いので、どうやら中国嫌いは本当のようです。そして、『嫌っていないよ』と言っているときでもやはり本心が出ている。2:32あたりで『私は中国は嫌いじゃないよ』と言っておきながら下唇が上がって首を横に振っている。これは『No』を表す微動作。彼は本当にわかりやすすぎるんですよ」

 アメリカでは、こうした微表情分析が政治に影響を及ぼすようなことはあるのだろうか?

「潜在的に違和感をおぼえて投票行動に影響を及ぼすこともあるかもしれませんが、アメリカ人は日本人ほど、専門家の言葉を鵜呑みにしませんからね。アジア圏では微表情の専門家が、政治家の本音を読み取って発言力を強めた場合、世論が変わる可能性は高いですが、しがらみも多いので慎重にならざるを得ないでしょうね」

 続いて、ヒラリー・クリントン候補。

⇒【動画】Watch Hillary Clinton’s full Super Tuesday speech
 http://www.youtube.com/watch?v=AyvaflqusdQ




「この動画だけを見ると全体的に表情、ボディランゲージと話している言葉が一致しており、メッセージが聴衆に響く力強い演説となっています。基本的に嘘はないが、一点だけ気になったのは6:23のあたり。話が中間層に及んだときです」

 クリントンが「アメリカは皆さんを守ります」と言ってすぐ「しかし」と条件付けをした瞬間、両眉が上がり眉が中央に寄り、目を見開くが、これは『恐怖』『不安』を表す微表情だという。

「条件付きの肯定は、アメリカ人の交渉術の一つ。ヒラリーは中間層を守るといいつつ、”しかし、あなたたちが正しい行いをするならば“と言っている。いざ大統領に就任して貧困率が変わらなかった場合、『あなたたちが正しくなかったから』という言い訳の余地を作っているわけです。それが見透かされてしまい、自分の主張が弱まってしまわないかという恐怖と不安を感じているのが見受けられます」

 15日には5つの州で予備選が行われ、「ミニ・スーパーチューズデー」と呼ばれるヤマ場を迎えるアメリカ大統領選。11月までに、各候補のどんな思惑が微表情に表れるか、今後も注目していきたい。 〈取材・文/安英玉(本誌)〉

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