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ショーンKの学歴詐称は、なぜ長年バレなかったのか? “微表情”の専門家が語る

 微表情とは、抑制された本音や「真の感情」が一瞬で顔に表れて消え去る表情のこと。その多くは0.2秒以内に行われるため目視で認識することが困難で、通常の会話では8~9割が見落とされてしまう。 (※「微表情」にあたる英語表記は、“micro expression”、”subtle expression”、“mini expression”などの用語に大別され、細かく分類されるがここでは総じて「微表情」とする)  顔に現れる微表情から「本心」や「真実」を読み取る技術は、FBIの捜査にも応用されている。だが、日本国内にまだ数名しかいないと言われる認定FACS(Facial Action Cording System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人である清水建二氏は、微表情が出ない場合も存在すると話す。 「小保方晴子さんがその典型例です。彼女は微表情がほとんどないんです。『理研に裏切られたと思うか?』という質問に『思わない』と答えながらも一瞬、悲しげな顔をする程度。しかし話がSTAP細胞に及ぶと完全に真実を語っている顔になる。状況証拠と照らし合わせると矛盾があるのですが、イマジネーションの世界に浸かっているとか、演技性パーソナリティの傾向が強い場合によく見られるパターンです」  また、清原和博容疑者が逮捕前にお笑い番組に出演し、薬物疑惑について突っ込まれた際の動画も取沙汰されたが、「当該動画だけでは、清原容疑者の微表情は検知できない」という。 「ただし、『いろんな人に恨まれて……』というときに何度も頷くのは自分自身を納得させるときの動作。色んな人に恨まれているから、薬物使用疑惑をかけられているんだと思い込もうとする心理が出ていたのだと思われます」  同様に、学歴詐称疑惑で話題のショーンK氏からも、これといった微表情が読み取れなかったと清水氏は話す。分析に使用したのは下記の動画だが…… ⇒【動画】『OKWave AWARD 2015』ショーン・マクアードル川上(ショーンK)賞 http://youtu.be/scX_RRnY5-U
⇒【動画】PRIME FACTOR【20141213】2014年 人の心、社会の空気 http://youtu.be/dIKrTWCt_Rg
「映像からはショーンK氏の学歴詐称疑惑に関わる特筆すべき微表情は検出されませんでした。この度の学歴詐称問題についてショーン氏は大筋、自らの非を認めているのにも関わらず、です。その理由はなんでしょうか。いくつかの可能性が考えられます」 ①映像が適当ではなかった 「分析に用いた映像は、ショーン氏が自身の学歴について直接語っているものではないため、会話をしている最中にショーン氏は感情のブレを感じることがなかった。ゆえに微表情が何も出なかった、ということが考えられます」 ②罪悪感がない 「私は精神科医ではないので他者を診断することは出来ませんが、あるパーソナリティー障害を持っていると、嘘をついている本人は全く嘘をついている意識を持たない、もしくは嘘をつくことによる罪悪感が生じないことが研究からわかっています。嘘をついている意識がなかったり、罪悪感がなければ、微表情は生じません」 ③嘘をつくことに慣れてしまっている可能性がある 嘘をつくことに最初はぎこちなさを覚えていても、何度もついているうちに、嘘をつくことに慣れてしまい、嘘をつくスキルが巧みになる。そうすると微表情が生じないことがある ④記憶の塗り替え 「本当に自分は○○なんだ。」と自身の理想像を作り上げ、自身をマインドコントロールすると、記憶が塗り替えられ、真実ではないことを真実であると誤認識する事例が往々にしてある。自身は本当のことを話しているつもりなので、当然、感情にブレが生じることはなく、微表情は生じない  さて、前置きが長くなったが、ここからが本題である。 「『なんだ、微表情って使えないじゃん!』という声が聞こえてきそうですが、こういうときは、質問法や比較法を使うことで微表情が生じ、真実の糸口がつかめることが多々あります。  例えば以下の映像の23:00-25:00あたりのショーン氏の発言シーンを見てみて下さい」 ⇒【動画】PRIME FACTOR【20150207】「正しい留学」https://youtu.be/PltR5V32Z78
「海外の大学での短期間プログラムについて、ショーン氏は表情・身振り・手振りを豊かに話されています。私が現実のインタビューの場でこのような場面に遭遇したら、学位の出る正規留学プログラムについて語って頂き、その語っている様子と先の短期プログラムのときの語り方とを比較します。もしくは正規留学プログラムについてショーン氏が語っているシーンがあれば、その映像と比較する方法がありますが、そうした映像を現時点では見つけることができませんでした」  ここに、ショーンK氏の巧みさがあるのだという。 「実際に体験したことを話すとき、私たちの表情は豊かになり、イラストレーターと呼ばれる手振りが増えます。イラストレーターとは、言葉を鮮明化する働きのことで、例えば、『このくらいのボール』と言うとき、手でボールの形をつくります。この手の動きをイラストレーターと呼びます。このとき表情は、微表情が表れることなく、普通の表情が表れます。しかし、実際に体験したことがないことをあたかも体験したことがあるように話すとき、通常は嘘がばれないだろうかと恐怖の微表情が生じ、イラストレーターは減少する。なぜなら鮮明化すべきイメージがないため、口では語ることができても、手を使ってイメージを形成しながら語れないからなのです」  つまり、人は実体験ではないことを身振り手振りをまじえて自然に語ることは、通常は不可能だということ。しかし、ショーンK氏はあたかもそれを真実のように振る舞い、周りに印象づけていたとすれば「なぜ、これだけ多くのスタッフが関わっておきながら、長年誰も気づかなかったのか?」ということに合点がいくのである。 「真実を解明するには、微表情をただ観察しているだけでは不十分な場合があります。微表情分析の守備範囲を正しく知ることで、分析の有効性を高めることができます」  この分析、普段の生活にも応用できるかも知れない!? 〈取材・文/日刊SPA!取材班〉
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