奇行の果てに緊急入院…カニエ・ウエストの狂気と天才
アメリカのラッパー、カニエ・ウェストの緊急入院(11月21日)から1週間以上が経過した。詳細な病状は現在も不明だが、精神のバランスを崩しているのは確かなようだ。
搬送前に行っていたライブで「Pizzagate」なる陰謀論(筆者註・オバマ大統領やクリントン家が関与するとされる小児性愛者のネットワークを表す語。アメリカの“ネトウヨ”によるねつ造)をわめき散らしたとの一部情報もあり、想像以上に深刻なのかもしれない。
他にも奇行の数々は以前から伝えられていた。ライブ中に友人であるジェイZとビヨンセ夫妻を延々ディスったかと思えば、ドナルド・トランプを「天才だ」と絶賛する。300万円ほどのソファーを買うだけ買って、使わずに物置へしまいこんでしまったこともあるという。
そのため今回の入院に対しては、薬物の影響を疑ったり、そもそも人格が破綻しているのではないかとの反応が多く見られた。無理もない。こんな人間が身近にいたら、たまったものではないだろう。
とはいえ“天才とナントカは紙一重”との言葉もあるように、カニエ・ウェストは、音楽の天才である。個人的には、彼こそが21世紀最初の天才だと考えている。エルトン・ジョン曰く、「マイルス・デイヴィスにフランク・ザッパを合わせた才能」とのことだが、もしかしたらそれ以上かもしれない。
ただ残念ながら日本ではよほどの音楽好きでない限り、カニエの曲に触れる機会は少ないのが現状だ。ヒップホップやラップとなると、詞が分からないから楽しめない人もいるかもしれない。だがそれはひとまず忘れて、まずはカニエのサウンドに身をまかせて楽しんでほしい。
というわけで、ほんのさわりだが、いくつか紹介していきたい。
まずは「Runaway」(アルバム『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』収録)。
●Kanye West – Runaway (Extended Video Version)
この曲のビデオに関して、ルー・リードが興味深いコメントを寄せている。
「カニエは、一見バラバラと思えるものをつなげようとしているんだ。つまり、ヒップホップのサウンドでバレエダンサーを踊らせる試みだね。でも、もとをたどればヒップホップもバレーだって対立し合っているわけではない。カニエはその真理をすぐに見抜いたということなんだよ。
どんなスタイルの音楽も、カニエにかかれば全部同じに聞こえるんだ。心の奥底でつながっていると分かるんだろう。みんなただの音楽だ。それを知っているからカニエは偉大なんだよ。」
(『Lou Reed Talks Kanye West’s Yeezus』 The Talkhouse 2014年9月3日配信 筆者訳)
だが、その最終的な融和を手ごたえあるものとするために、カニエは差別や区別が現に存在している事実を尊重する。それゆえ、ビデオの中で背を向けてバレエダンサーと向き合う姿勢を取るのだ。
トランプを絶賛し、「この世界は人種差別的だ」と言い放ったときのカニエは決して理性を失っていなかったはずだ。ルー・リードがわざわざ「つながり(Connections)」という単語を持ち出したのも、カニエが断絶や分裂を修復する殉教者だと強調したかったからなのだろう。
全米21公演をキャンセルして緊急入院
カニエ・ウエストは21世紀最初の天才だ
ただ残念ながら日本ではよほどの音楽好きでない限り、カニエの曲に触れる機会は少ないのが現状だ。ヒップホップやラップとなると、詞が分からないから楽しめない人もいるかもしれない。だがそれはひとまず忘れて、まずはカニエのサウンドに身をまかせて楽しんでほしい。
というわけで、ほんのさわりだが、いくつか紹介していきたい。
①対立こそ融和の母ーーRunaway
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