わずか5分の時間短縮のために「羽田連絡道路」を建設。渡り鳥の棲む干潟が犠牲に!?
「『羽田空港を利用するVIPの移動時間を短縮するため』ということで、奇跡的に残った干潟エリアに橋を架ける『羽田連絡道路計画』(事業費約300億円)が進められています」
こう話すのは、日本自然保護協会の志村智子氏。羽田連絡道路は、安倍晋三首相がトップをつとめる「国際戦略特区」が具体化したものだ。この全長約600mの橋を建設することで、渡り鳥が行き交う貴重な干潟に悪影響を及ぼしかねないという。
「吉野川に3番目の橋を架ける工事が始まった後、渡り鳥の飛来場所が変わってしまいました。恐らく橋が障害物となったり、砂洲が変形したりしたためと考えられます。同じことがこの道路でも起きる可能性は十分にあります」(志村氏)
⇒【資料】はコチラ(連絡道路検討範囲の地図)https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1106484
この計画に対し、「日本野鳥の会」「世界自然保護基金(WWF)」「日本自然保護協会」は今年2月、安倍首相や石井国交大臣、黒岩神奈川県知事らに「(仮称)羽田連絡道路に関する協議会設置の要望書」を提出した。
「現在、東京湾の干潟は過去の10%程度しか残っていません。多摩川河口は、東京湾に残る河口干潟としては塩性植物群落が残る唯一の場所です。多くの渡り鳥や底生生物が生息する場所は、羽田空港の直近という立地では奇跡的なのです」(日本野鳥の会神奈川支部・石井隆氏)
そんな貴重な干潟を危機に晒し、多額の税金を投入して、どれだけ時間短縮効果があるのかというと、何と「わずか5分です」(石井氏)という。
「貴重な干潟に悪影響を及ぼす恐れがあるのに、橋の必要性や、代替案の検討も不十分なまま。事業計画に関する情報公開は不十分で、関係者との間の議論も不足しています。ぜひ多くの人に、このことを知っていただきたいと思っています」(同)
建設によるメリットと、それによって失われる環境はどちらが大事なのだろうか。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
羽田空港の直近に、奇跡的に残った干潟

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