「男気には溢れている」元店長が語るワタミの“寄り添う文化”
「寄り添う。それがワタミなんです」
元ワタミ店長A氏(36歳)は、在職時を振り返りこう話す。
今や、ブラック企業の代表格として、その名が知られるワタミ。ブラック企業といえば、ともすれば、従業員を使い倒し、使い捨てる――そんなイメージだろう。だが、元ワタミ店長のA氏に話を聞く限り、ワタミは、そうしたブラック企業のステレオタイプとはかけ離れている。
その実情は、大げさに言えば食に命を賭ける情の厚い男たちの集団だという。
A氏が新人時代、1人、洗い場で皿洗いをしていた日のこと。その日は客入りも多く、膨大な量の皿が積まれていた。到底、1人では、こなせない作業量だった。
その洗い場に、ホール作業をしていた店長が入って来た。店長は入ってくるなり、「君、1人でやってるのか?」と尋ね、A氏1人であることを認めると一緒に皿洗いを始めた。
ワイシャツを泡まみれにして皿洗いを手伝う店長は「何でも1人で背負うことはないから。ワタミでは皆が寄り添って、助け合うんだよ。それがワタミだから」とA氏に、ワタミの「互助の精神」を語った。A氏は、頬から涙が伝わってくるのがわかったという。
「働いている人は皆、男気溢れる人たちばかりでした。困っている人がいたら自分を犠牲にしてでも助ける。最初に店長に優しくされて、グッときてしまいましたね。ただまぁ、それも度が過ぎるから困りものなんですが……」
この「互助の精神」は、ワタミの社内システムにも見受けられる。居酒屋の客入りは地の利や時間帯に左右される。同じ時間帯、ある店舗では客入りが多く繁忙を極め、別の店舗では客入りがよくないこともしばしばだ。そんな場合、ワタミでは、繁忙店に客入りがよくない店舗の社員やアルバイトが応援に行く。
困っている仲間に寄り添う、互助の精神だ。だから、ワタミでは従業員は皆、全国どこの店舗でもタイムカードを押せる仕組みを取っているという。
だが、こうした情に熱いワタミの社風は、その水に馴染めなかった者にとっては、ただ暑苦しいだけだ。一度は涙を流したA氏も、2年ほど勤めた後に精神に失調をきたし、退職してしまった。3月1日に発刊した『ブラック企業経営者の本音』(秋山謙一郎著・扶桑社)では、これまで伝わらなかった経営者サイドからみたブラック企業の実情が詳らかに描かれている。新年度を前にして、就職、転職の時期、働くこと、会社とは……を考える一冊としてお勧めだ。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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『ブラック企業経営者の本音』 経営者サイドが明かした怖すぎる本音! ![]() |
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