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世界的陣取りゲーム「イングレス」に岩手県が注目したワケ

Ingress

イングレスのゲーム画面。実際に歩きながら、現在地に対応した地図上で戦う

 グーグルが提供するスマホ向け位置情報ゲーム「イングレス(Ingress)」が、いまにわかに注目を集めている。イングレスは、世界各地にある史跡・名勝・彫刻・ランドマークなどの“ポータル”を取り合い、陣地を広げていくリアル陣取りゲーム。ユーザーは、緑と青の2つの陣営に分かれ、各地の“ポータル”を実際に回遊しながら遊ぶ。 “ポータル”は、都市部や観光地を中心に多数存在しており、たとえば、渋谷ではハチ公、ヒカリエ、宮下公園、尾崎豊記念碑などが“ポータル”として登録されている。手元のスマホからアプリを起動すると、現在地周辺のマップ上に青と緑の光り輝く“スポット”が表示される。これらを追い求めて歩き回っていると、見慣れた街中の知らない一面を発見したり、ダイエットになったりと、ゲームの主目的以外の部分でも楽しむことができる。  そんなイングレスを、観光PRに活用しようと岩手県が注目している。岩手県は、「岩手県庁 Ingress 活用研究会」を発足。9月25日に第1回研究会が行われた。岩手県は、すでに観光ポータルサイトにて観光情報の発信、旅館などの予約システムの提供のほか、フェイスブックやツイッターなどを活用している。話題になっているとはいえ、なぜイングレスに注目し、研究会発足に至ったのだろうか? 「知人に誘われて始めてみたら、実際に歩いて遊ぶという特徴が、観光地めぐりになるのではと思い、研究会を発足させました」と語るのは、同研究会の主宰で、岩手県庁秘書広報室の保和衛さん(副室長兼首席調査監)。 「庁内の若い人に知恵を借りようと公募したところ、20代~30代の10人が集まってくれ、研究会を始めることができました」(保さん、以下同)  集まったのは男性のみだというが、第1回の研究会ではさっそく活発な議論がされ、さまざまな課題に取り組む準備が進んでいるという。 「現時点で、岩手県内のポータルが少ないことも課題のひとつ。まずは、盛岡市内で歩いて遊べる“ポータル”を充実させることが当面の目標です」 ⇒【画像】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=723799
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岩手県の状況。ポータル自体がまだ少ない

“ポータル”は、ユーザーが未登録の“スポット”候補地点から、写真を撮影し、申請することができるが、審査には数か月かかるとも言われている。この点については、「いずれはグーグルに対して提案し、何か一緒にできればと思っています」というので、年度内に開催予定の2回の研究会で具体的な話が進むのかもしれない。とはいえ、グーグルが世界的に展開しているサービスだけに、日本の一地方自治体の提案が通るかどうかは未知数だ。  しかし、グーグルは、2014年5月に宮城県石巻市で地元団体や企業と協力して、イングレスのイベントを開催。イベントに向け、120か所のポータルを設置している。同イベントでは、東日本大震災で移設された施設に対して、震災前の写真を“ポータル”に登録し、震災前後の姿を参加者が見られるといった工夫もされていた。  岩手県においても、観光PRと同時に、東日本大震災からの復興の現状を伝えることもテーマの1つに検討しているという。 「震災から3年半が経ち、全国的には関心が薄れ、忘れ去られつつあるという危機感があります。石巻の例を知って、岩手県でも釜石や大船渡などに来ていただき、イングレスを楽しみながら、復興の様子を知ってもらえるキッカケの1つになれば考えています」  同研究会は、“ポータル”充実のための施策、国体など大規模イベントや旅行代理店との協力イベントの開催、イングレスユーザーによるイベントの開催誘致など、さまざまな可能性を模索していく予定だという。どのような活用プランが登場するのか、今後年度内に2回開催されるという研究会の動向に注目だ。 <取材・文・撮影/林健太>
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