全国820万戸の空き家が問題に。腐って崩れかけ…行政が強制取り壊し
日本中に空き家が溢れている。総務省が発表していた「平成25年住宅・土地統計調査」によると、全国の総住宅数6063万戸に対する空き家の数は820万戸。空き家率は13.5%と前回調査(平成20年)より0.4ポイントも上昇した。
先月、この増え続ける空き家に対処するため、政府は「空き家等対策の推進に関する特別措置法(空き家特措法)」を施行した。
長年放置され老朽化した空き家は倒壊の危険がある。しかし、空き家は私有財産であり、所有者が不明だったり、対処しづらい状態にあった。特措法は、倒壊の恐れや衛生上問題のある空き家(特定空き家という)を定める全国的なガイドラインだが、特措法施行以前に、行政による取り壊しを行った区が都内に2つある。今回、その両方に足を運んでみた。
昨年5月に都内で初めて取り壊しを行なったのが大田区。取り壊したのは築46年の木造アパートだった。現在はコンクリートの基礎部分だけが残る空き地になっているが、撤去されるまでは荒れ果てたひどい状況だったという。当時の様子を近隣の住民に聞いた。
「家屋全体が腐って崩れかけ、雨戸やトタン屋根の一部が風で飛ばされて周辺はかなり危険な状態でしたよ。持ち主が90代と高齢の方なので、『ああ、はいはい。すぐ直します』と応対するものの、10年間なにも改善されなかったんです。取り壊されたことはよかったんですが、空き地になったことでゴミの不法投棄や敷地の雑草などの問題が出てきて、地域の住民たちが代わりに処理してます」
続いて2件目は、昨年12月に取り壊しが行われた墨田区。この場所にあった2階建ての木造家屋は、2階部分が腐って崩れ落ち、壁面も隣家に倒れかかった状態のまま放置されていた。近隣の住民は7年前から同区役所に「自分の家に傷がついた」「倒壊の危険がある」など、大田区同様に苦情を寄せていた。当時の経緯を墨田区の担当者は、「区の条例に基づく指導や勧告等を行ってきましたが、所有者による対応はされませんでした」と話す。そして、最終的に取り壊しへ踏み切ることとなった。
実際のところ、特措法は施行されたが運用するにはまだまだこれからだという段階だ。大田区も「特措法はできても、それに基づいた『特定空き家』を認定できていない。区の条例では建物が対象でしたが、特措法ができて外観や衛生面など範囲が広がりました。ですから、大田区では現在把握している170件の空き家の再調査を行っている最中です。区としてのルールができる時期は未定ですが、今年中には整えたいと思っています」(建築調整課担当者)と話す。
全国が同じ状況にあることを踏まえると空き家問題の改善にはまだ時間がかかりそうだ。
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<取材・文/週刊SPA!編集部>
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