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「奄美大島の海と山」がダブル汚染。基地建設の土砂採取で

景観・歴史・文化・環境・生態系などの破壊に目をつぶり、ひっそりと進行している開発計画は数多い。それは本当に必要な事業なのか? 地元住民はどれだけ情報を与えられているのか? 全国各地で進められている、“あまり知られていない”開発計画の現状をリポートした!! ◆基地建設のための土砂採取で周辺の海が“死の海”に ~奄美大島(鹿児島県)海と山のダブル汚染~
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採掘場から採取される量は膨大で、山の景観や環境、生態系にも大きな影響を与える(撮影/向井宏)

 沖縄県名護市辺野古で起こっている米軍基地建設問題では、同県・大浦湾などの環境問題が取りざたされている。その陰で、基地建設のために山を削られ、海が荒らされている地域があることはあまり知られていない。  基地建設のためには、大量の埋め立て土砂が必要となる。その土砂は沖縄だけでなく、奄美列島、佐多岬(鹿児島県)、五島(長崎県)、天草(熊本県)、門司(福岡県)、山口、小豆島(香川県)などから運ばれる。その合計は2000万立方メートル(東京ドーム17杯分)以上にも及ぶ。なかでも奄美大島にはその4分の1が割り当てられ、合計3か所から土砂が運ばれる予定だ。  これらの土砂の多くは「岩ズリ」と呼ばれ、普段であれば産廃扱いになるような、扱いに困るものだ。それがカネになるのだから採掘業者にとってはオイシイ話。それも、普段の年間操業量の数倍が採掘されるのだから“特需”といってもいい。業者はウハウハなのだが、その裏では深刻な環境破壊が懸念されている。  これらの土砂採取場は主に海に面していたり、人里離れたところにあったりして、普段は人の目が届かない。知らない間に山がひとつふたつとなくなり、景色が一変してしまうというわけだ。奄美大島を現地調査した向井宏氏(北海道大学名誉教授)はこう証言する。 「すでに山から持ってきた土砂が積み上げられているところもありました。いつでも辺野古に積み出せるようにしているのでしょう」 ◆生態系豊かな海が赤土流入で「ヘドロ」化  さらには、生活にも影響が出ているところもある。 「奄美の一部集落では採石場から崩れ落ちた土砂で生活道路が埋まり孤立するなど、生活に支障をきたし、非常時には命にも関わります。粉塵や騒音などの日常的被害のみならず、採石場に亀裂が入って住民が避難する騒ぎも起きました。これ以上の採石は住民の危険をさらに増すことになるでしょう」(環瀬戸内海会議・阿部悦子代表)  破壊されるのは山だけではない。海の環境にも重大な影響を及ぼす。山から大量に土砂を採取する過程で海まで土砂が流れ、生態系が破壊されつくしているというのだ。海中を調べた向井氏はその様子をこう語った。 「まさに“死の海”でした。生命力の強い種のサンゴだけはかろうじて生き残っていましたが、それ以外の生き物は全く見当たらず、ヘドロで埋め尽くされていました」 ⇒【写真】はコチラ nikkan-spa.jp/?attachment_id=910315
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奄美大島周辺のヘドロだらけの海中で、懸命に生きるサンゴ(撮影/向井宏)

 付近は日本でも有数のマングローブ林とサンゴ礁が広がる、生態系豊かな海だ。本格的な土砂採掘が始まれば、周辺環境のさらなる悪化は避けられない。阿部氏は「子供たちが普段遊んでいる海も赤土が流れ込んでヘドロ化が進んでいます。このままでは安心して遊ぶ場所もなくなってしまう」と憤りを隠さない。  基地建設で壊される環境は沖縄以外にも及んでいるのだ。 ― こっそり進む[ニッポンの風景]破壊計画 ―
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