激流、岩場、自己責任! 山奥開催のカヌー・スラロームの大会は、過去最高にスリリングな穴場だった件

~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第16回~

フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営している スポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。

 みなさんはボートとカヌーは何が違うかご存じですか。2020年東京五輪でも、もちろん両方の競技が実施されますが、正直なところよくわかっていないのではないでしょうか。パスタかラーメンかの選択を迫られたときの感じで「ボート行く?それとも、カヌー行く?」と問われたら、パッと決められますか。どっちがどっちだか聞き返してしまうのではないでしょうか。

 簡単に言えば、ボートは漕ぎ手の背中方向に船が進み、カヌーは漕ぎ手の正面方向に船が進みます。以上。

 ではダメですか? やっぱり。

 細かいことを言えば、両者はそれなりに違います。ボートは櫂のことを「オール」と呼び、カヌーは「パドル」と呼ぶ、とか。ボートは8人とか大人数で漕ぐ種目が中心で、カヌーは1人で漕ぐ種目が中心である、とか。ボートと違って漕ぐ道具が船に固定されていないので、カヌーのほうが細かな操作がしやすい、とか。とにかく全然違うのです。(※こうやって挙げてみても「大して違わんな」「クロールと背泳ぎ程度の差」「いっそ、まとめちゃえば?」という気もしますが、本音はグッとこらえていきましょう)。

 ということで、今回観に行く穴場競技候補は「カヌー」です。以前の記事では「ボート」を観戦しに行きましたが、そちらは大学生とかがイチャくらかしており、そこそこのにぎわいを見せていました。ボートのコースは全長2キロメートルとダダっ広いので、客席としては余裕がありそうでしたが、穴場感はさほどでもありません。カヌーは似たような感じなのか、全然違うのか。似て非なるものをしっかりと確認しておきましょう。

 で、向かいましたのは東京西部・御嶽渓谷。もう少しで奥多摩秘境に到達する東京の外れです。この渓流を利用して、カヌーの大会が開かれるとのこと。すでにリオ五輪出場を決めた選手も出場し、日本のトップクラスが一斉に集うハイレベルな大会なのだとか。うむ、このチャンス逃す手はありません。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=978929

 やってきました御嶽渓谷。穴場競技を観に行くと、いっつも「山の中に川が流れている場所」に来てる気がします。

 雄大な山を背景にドーンと掲出された看板。

 今回観戦するのはカヌーの中でも特徴的な「スラローム」という種目の大会。五輪で行なわれるカヌー競技には大きく「スプリント」という種目と「スラローム」という種目があります。スプリントはボートと同様に、穏やかな水面をスタートからゴールまで真っ直ぐ進んでいくというもの。一方、スラロームは激流に揉まれながら、設置されたゲートを右に左に通過していくというもの。ちなみに、看板にある「ワイルドウォーター」というのは、五輪にはない種目で、川の一定区間を自由に進み、ゴールへの到達タイムで勝敗を決めるという種目です。

 実は1964年東京五輪当時はカヌー競技に「スラローム」という種目はありませんでした。だもんで、スラローム会場のレガシーはありません。ロンドン五輪で造ったような「人工的に激流を流すコース」なんていう気の利いたものも当然ありません。川に来ているのでお察しかとは思いますが、会場はどんな感じかと言うと……

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=978939

 美しい日本の川原。観客席?何ソレ?食えるの?

 東京にもこんな立派な岩があるんだなぁ。

 会場となる岩場には結構な人が詰めかけており、選手・関係者を含めると数百人はいたでしょうか。カメラを抱えた熱心なファンは流れの激しいポイントに陣取り、カヌーが通るたびに連写します。聞けばこの渓谷は関東圏でも屈指のカヌー練習場だそうで、この町からカヌー競技のオリンピアンも生まれているとのこと。「屈指の名所に日本トップクラスが集った」という前提で考えると、「これでマックスのにぎわいかな?」という気もしないではありませんが、なかなかのにぎわいです。

 スラローム競技は、その名の通りスラロームをする種目。川には2本の棒を用いた20ヶ所ほどのゲートが作られ、ゲートをくぐりながらゴールに向かいます。ゲートは緑色のものと赤色のものの2種類があり、緑のゲートは川下に向かって通過し、赤のゲートは川上に向かって通過する決まり。ドンブラコドンブラコと下るだけでなく、流れに逆らって上る必要もあるわけです。

 ゴールまで早く到達した人が勝ちなのですが、もしもゲートの棒に接触するとペナルティとしてゴールタイムに2秒が加算され、ゲートを通過できなかった場合はペナルティとして50秒が加算されます。上位勢はコンマ1秒の世界で競いますので、ゲート不通過は致命的なミス。そして接触の2秒も勝負をわける大きな差を生みます。正確に素早くゲートを通過するために、川の流れを読み、攻略ルートを考えていくのが重要となります。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=978945

 この画像で言えば、4番ゲートを川下(画像左)に向かって通過したあと、反転して5番ゲートを川上(画像右)に向かって通過することになります。

 ということは、コースレイアウトによってどこが勝負をわけるか予想も立てやすいわけですね。流れが速いのにコースがうねっているところは、ワンミスが大きな差を生むので見どころとなります。勢いよく下ってきてから反転しなければいけない場所は、カーレースのコーナリングでも見るような感じで楽しめるでしょう。

 カヌーが水に飲まれるほどの激流ポイントは見どころ。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=978950

 ときにはカヌーがひっくり返ることも。

 また、一定ではない川の流れは、必ずしも理想のラインでゲートに向かうことを許しません。ちょっと左右にズレてみたり、思いがけない方向に流されてみたり。もちろんキレイに通過するのが理想ですが、どうしてもゲートに当たりそうになることはあります。そんなとき、選手たちはまるでリンボーダンスでもするように身体をのけぞらせて棒を避けるのです。理想と現実の折り合いのつけ方、自然との格闘がカヌーにはあるのです。

 マトリックスみたいなポーズで棒を回避。

 このようなエキサイティングな競技性、ハッキリ言って面白い。ボート観戦で感じた「真っ直ぐ漕いでいるだけだな…」という隠し切れない本音は、このスラロームに関してはまったく無縁のモノ。「今の選手はすごいスピードでゲートを通過したぞ!」「見事なターン!」「あー、当たった!」など素人目にもポイントがわかりやすく、まったく飽きるところがありません。

 そして、何より見栄えがいい。山奥の渓谷に来ているせいもあるかもしれませんが、激しい川の流れ、水しぶき、そこを進む船、マイナスイオンがモワーッと出ていそうな会場(※岩場)の雰囲気がとてもイイ。これまでに訪れた穴場競技会場も自然豊かなところが多かったわけですが、今回の会場はどれにも増して圧倒的に大自然です。いっそ2020年大会もココでやればいいんじゃないかと思うほど素晴らしい環境なのです。椅子はないけど。

 次回は有力選手を間近で目撃したリポート「所属先がお寺! 覚えておきたいリオ五輪カヌー日本代表・矢澤一輝選手」です。

自由すぎるオリンピック観戦術

スポーツイベントがあるごとに、世間をアッと言わせるコラムを書き続ける、スポーツ観戦ブログ『フモフモコラム』の中のひとによるオリンピック観戦本

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