「プレミア12」は侍ジャパンのための大会? 決勝戦ガラガラの国際大会を考える
惜しくも準決勝で韓国に敗れてしまった侍ジャパン。決勝に出場できなかったためか、ファンからはチケットの払い戻し騒動までに発展するなど問題も発生した。これはもともと3位決定戦と決勝戦のチケットが2試合で1セットなっていたからで、現地・東京ドームではこの事態に対し、チケットの半券で再入場ができるように対処。少しでも観客動員を増やすために対策を打った。
その対策も効果は表れなかった。「国際大会の決勝戦」を銘打っているにもかかわらず、韓国VSアメリカというカードは常時のジャイアンツ戦と異なり観客が全く入らない状態に。さらに韓国はアメリカ代表を8-0という大差がつく試合展開だったため、途中で球場を後にする観客も絶えなかったのだ。栄えある第1回大会の優勝国としてその名を刻んだ韓国は、観客の少なさに悲痛の笑みを浮かべていたかもしれない。
何故このような惨劇が起こってしまったのか? 海外のMLBと日本のNPB――両者の視点からプレミア12を見ていこう。
◆ビジネスの場と化した国際大会――MLBの視点
キューバ政府がアメリカとの国交正常化へ向かうなか、MLBは国際的な選手のスカウトに視野を広げている。今年、MLB入りを目指す韓国出身の選手が、ソフトバンクのイ・デホ選手などを含め少なくとも4人いることが例に挙げられる。
一方で、ダルビッシュ有投手(レンジャーズ)がTwitterで「もう12月になりそうなのにバリバリ野球やっていて選手たちは身体大丈夫なのか?」と疑問を呈していたように、MLBの選手にとって今はシーズンオフ。最高の投手に贈られるサイヤング賞を3度受賞するクレイトン・カーショウ投手(ドジャース)のようなトッププレイヤーには、2016年度の年俸が日本円にしておよそ40億円以上(約3450万ドル)という契約がかかっているため、現実的に代表として招集することが不可能なのだ。
こうした現状で、国際大会の利点は実際にスカウトが選手を見ることができるところにあると言えるだろう。MLBのスカウトたちは日本では前田健太投手(広島)や大谷翔平投手(日本ハム)といった若手の選手に目をつけ、先物買いをしている。また、逆にマイナーリーグを主な舞台としていたアメリカ代表の選手が、日本や諸外国に自身の能力をアピールするきっかけともなり得る。
◆日本国内のプロ野球はまだまだ人気――NPBの視点
今回のプレミア12、日本での盛り上がりは視聴率にして25.2%(関東地区:ビデオリサーチ調べ)。2013年のWBC準決勝の視聴率は20.3%(関東地区:ビデオリサーチ調べ)と、遜色ない結果だったことがわかる。侍ジャパンの敗退後、「優勝できない日本以外に興味はない」と言わんばかりに決勝戦の観客数がガラガラだったことは、発想を逆転させれば日本国内の野球はまだ人気が根強い、という結論が浮かび上がるだろう。
11月20日に、世界野球ソフトボール連盟は「もし野球が追加競技として認められた場合、このプレミア12は出場枠の内の一つを争う予選大会になる」と発表。名実とも権威ある国際大会となったが、この決勝の閑散とした様子は、連盟員たちの目に果たしてどう映っていたのだろうか?
優勝した韓国、メジャーの選手を出すことなく決勝まで勝ち上がったアメリカ、強豪・カナダを下し予選でも日本を苦しめたメキシコ。彼らの活躍に関心を抱くことも、日本人としての「おもてなし」ではないだろうか。
取材・文/石橋和也(Far East Division)
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