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「タダで海外に行ける」と噂の“運び屋”に応募してみた

都市伝説的な「いくらなんでもおいしすぎるだろう」というナゾな職業。実際に手を挙げてみたらどうなったかをリポートする。今回は「タダで海外に行ける」と噂の“運び屋”、ハンドキャリーとは一体?

一見、ラクそうなものの、実は求人を探すのも大変

 ハンドキャリーとは、貨物を手荷物として運搬することで、確実に届ける緊急運搬業のことだ。航空便では間に合わないときに活用されるため、世界中に24時間以内に届ける必要がある。
ラクそうなものの、実は求人を探すのも大変

待てど暮らせど荷物が出てこず丸一日、空港のターンテーブル近くで待機したことも

 面白そうな仕事だが、なかなか求人は見つからない。それもそのはず、仕事自体が不定期なことや顧客情報の流出防止などもあって、募集には慎重な会社が多い。というのも、例えば○月×日に中国の青島からタイのバンコクまで飛んだとすると、業界によってはどの会社がどんなものをハンドキャリーしたのか筒抜けになってしまい、販売戦略に関わってくるシビアな世界なのだ。よって、人づてでお呼びが掛かるのがほとんどなのだ。  そんな仕事に、海外在住歴が長い記者が応募する機会を得たのは、よくチケットを買っていた旅行会社からの一本の電話だった。 「中国からロサンゼルスへある物を運搬してもらいたいんだが、旅慣れた人を紹介してくれ」という。それならこちらも自信がある。記者自身が応募してみることに。  翌日、指定時間に空港で待っていると4人の男性がやってきた。1人はハンドキャリー専門会社の代表で、ほか3人は一緒に飛ぶキャリアーだという。荷物は大手自動車メーカーのエンジン部品とのことだが、麻薬などを運ばされたらとビビリ、しつこく代表へ質問して中身を確認させてもらった。その後、中国の大手日系ハンドキャリー会社の求人に登録することにした。こちらもきっかけは、あるレストランのオープニングパーティで担当者を紹介してもらったことだ。経験者であることを伝えたので、面接はなく、住所、電話番号、旅券情報、語学力などを記載して登録は終了した。あとで聞いたが、面接する場合は、英語による交渉能力などトラブル回避能力やホウレンソウがきちんとできる人間かなどを問われるそうだ。  登録の2日後にベトナム・ハノイへの初仕事が入った。2日後に仕事が入るとはさすがに大手だ。  ただ、いろいろな土地に行け1泊2日で1万~3万円と報酬も悪くないが、ラクな仕事ではない。
ラクそうなものの、実は求人を探すのも大変

多いときには1人で100㎏以上の機械類を運ぶため体力も要する

 基本は1人で飛ぶことが多いので誰かと一緒に飛ぶことは少ないが、時には本当に日本人かと疑うようなキャリアーにも遭遇。口調は穏やかだが、過去に大手企業を脅したと口にしていた男は、実は国際指名手配を受けている現役ヤクザで、会った半年後にバンコクで逮捕された。また、短パン&麦わらの老人で通称・(釣りキチ)三平さんなどキャラが立っている人間の集まる仕事だ。そんな面白さもあり、ライター稼業の傍ら、いまだに世界を飛び回っている。 ― [ナゾな求人]に応募してみた ―
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