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ヤクルト・真中満監督「連敗中でも自分が思ったとおりの采配をしようと吹っ切れた」

一昨年の借金は「26」。昨年も借金「21」。開幕前の順位予想では最下位予想が多数を占めた東京ヤクルトスワローズ。就任1年目、44歳の青年監督・真中満はそんな弱小チームをリーグ優勝に導いた。  開幕直前、セ・リーグ6球団の監督が一堂に会したイベントでこんな一幕があった。当時横浜監督の中畑清氏がルーキー山崎康のクローザー抜擢を公表するなど、派手なパフォーマンスが目立つなか、真中は落ち着いた口調で語った。「キャンプ、オープン戦を通じてやろうとしたことができた。投手力を含めた守りで勝負したい」
東京ヤクルトスワローズ 44歳の青年監督・真中満

’71年、栃木県生まれ。宇都宮学園(現文星芸大附属)高時代は春夏連続甲子園出場。日大時代は東都リーグでベストナイン4回。’92年ドラフト3位でヤクルトスワローズへ入団。’90年代後半から野村ID野球の申し子として活躍。現役晩年の’07年はシーズン代打起用98回で31安打(日本記録)を放った

 真中の言葉どおり、スワローズの守りは開幕から光る。昨季防御率リーグワーストだった投手陣が、開幕から14試合連続で3失点以下という日本記録を樹立した。真中はその踏ん張りを評価する。 「春先はどの球団も打撃陣が苦しんでスタートした。そんな中で1-0とか2-1とか、接戦が続いた。そんな厳しいなか投手陣は本当に頑張ったと思っています」  5月は一転、9連敗と苦しむ。「9連敗中は……最初の5、6連敗までは苦しかったんです。そんなとき、相手は5連敗中のチームとの3連戦。僕も苦しいけど、相手の監督も苦しいはず。そこで僕は一歩引いて、連敗中の敵将の采配を観察したんです。そのとき同じく連敗している相手チームの戦術はどこか無理があり、苦し紛れに映ったんです。そこで『連敗中であっても自分が思ったとおりの采配をしよう』と吹っ切れたんです」  とかく監督は、負けが込むとセオリーをなぞらえがちだ。無死でランナーが出たらバントでセカンドに送り、後続に期待する。一見、最善を尽くしているように映る采配も、実は監督自身が「体裁」を整えているにすぎないことがある。 「6連敗したあと『自分は一生懸命やっています。順序をたどっています』という野球はやめた。自分が開幕からやろうと思っていたことをやろうと。ただそのあとも3連敗してどうなるかとか思いましたが(笑)、プロ野球の監督をやらせてもらって1年目の5月、シーズンに入ってたった1か月で9連敗をさせてもらった。こんな経験はなかなかできないし、早めに連敗を経験させてもらったことは、大きな財産になりました」  スワローズの優勝の要因は、打撃部門のタイトルを総ナメにした攻撃陣に称賛が集まりがちだ。しかし今季の防御率3.31は、過去四半世紀のチーム防御率でもベスト3に入る数字を記録した。 「キャッチャーの中村を中心に守備陣がしつこく粘った。山田なんかトリプルスリー(3割30本塁打30盗塁)と攻撃面ばかり注目されるけど、セカンドの守備力が向上した。首位打者のサード川端も、打点王のファースト畠山も、移籍してきたショートの大引も、1点でも少なく失点を防ごうと普段から守りに興味を持ち、実践した。ピンチで最小失点に抑えたことで勝ちに繋がった試合もあった」  相手の特徴や打球方向を考えた守備位置にもこだわった。 「確率の問題だから、構えたところとは反対に打球が飛ぶこともあるけど、なるべく確率の高いところに守ろうと決めて、思い切ったシフトを敷いたりしましたね」  素人目に見ると正面をついた打球は、事前の備えの賜物だった。 「あらかじめどこに守るかで10勝とは言わないまでも、勝利を拾えた。わずかな差が、あとあと大きな結果に繋がるということを選手が理解してプレーできていたんです」 取材・文/小島克典 撮影/ヤナガワゴーッ! 再構成/SPA!編集部 ― 真中式[勝つ組織の創り方] ―
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