更新日:2022年08月31日 00:26
ニュース

「過労死ライン」を超える教師たち…部活動で土日も合法的にタダ働き

飲食店員は涙を流し、運送業界は悲鳴をあげる……昨今、人手不足や薄給による労働問題は枚挙にいとまがない。しかし、待遇は安定、人員も潤沢な業界からも「ウチもブラックだ」と怨嗟の声が聞こえているのだ……

法律で残業代はナシ。教師の熱心さが、やりがいの搾取に

部活動 文科省の調査によれば、過労死ラインを超えた残業時間(月80時間超)を強いられている教師は小学校で34%、中学校で57%にものぼる。特に彼らの負担となっているのは部活動だ。野球部の顧問を務める片山隆さん(仮名・27歳)の毎日はまさに野球漬けだ。 「基本的に放課後は19時まで部活なので、定時に帰れる日はほぼないですね。毎週土日は9時から18時まで部活です。前日に雨が降ると、グラウンドが使えるか朝6時に確認しにいくこともあります」  教師の本業である授業に差し支えるのは明らかで、顧問を返上したいのが彼の本音だ。だが、部活問題に取り組む教育関係者の団体「部活問題対策プロジェクト」の小阪成洋氏によれば、「NO」とは言えない空気があるという。 「ほかの教師に負担がかかるので、学校内では全員が部活動の顧問をやらないといけないという暗黙の了解がある。教師が部活顧問を拒否する権利は、事実上ありません」  部活の指導に全教員が当たることを原則としている中学校の比率は、1996年には57%だったのに対し、2016年には87.5%と20年間で大幅に増加している(※)。もはや部活顧問は教員の業務の一部として組み込まれてしまったようだ。  にもかかわらず、公立の小中学校の教員には「給特法」(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)という法律が適用されており、「時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」と明確に定められている。つまり、合法的にタダ働きをさせられているのが現状なのだ。
次のページ right-delta
ブラック企業の働き方は、部活動を拠点に育っている?
1
2
おすすめ記事