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インドで農民の自殺が増えている。原因は「遺伝子組み換えワタ」!?

 私たちが着るコットン製品の原料であるワタ。その一大産地のインドで、’00年代初頭に「遺伝子組み換えワタ」の栽培が始まった。「害虫に強く収量が増える」として、今やインドのワタの栽培面積の9割を占めている。ところが、この種子や農薬の購入に多額の借金を抱えた農民が相次いで自殺しているという。

インド農家

耐性害虫出現で農薬使用量が増加?


 遺伝子組み換えワタは、殺虫タンパク質の名前の頭文字から「Btワタ」と呼ばれる。殺虫タンパク質を生成する遺伝子が組み込まれており、ワタを食べた害虫が死ぬ仕組みだ。

 Btワタ種子の供給元のひとつ、モンサント社はウェブサイトで「’04年にインドのワタ生産者を対象に実施した調査では、(Btワタを栽培した農家で)従来品種のワタの栽培を行った農業生産者に比べて収益が118%増加しています」「収量が64%増加し、殺虫剤散布にかかるコストが25%減少したことも示されています」としている。

 米国ミズーリ州に本社を置くモンサント社は、遺伝子組み換え作物の世界シェア9割を誇る世界的大企業。農薬メーカーとしても有名で、ベトナム戦争で散布された枯れ葉剤の製造メーカーでもある。

 これに対して「遺伝子組み換えワタは、栽培を始めてから数年は大きな利益を得られますが、その効果は年を追うごとに減っていきます」と指摘するのは、「市民バイオテクノロジー情報室」代表の天笠啓祐氏。

「モンサント社は、種子とそれに合わせた農薬を販売しています。最初は高い害虫抵抗性を示すため、農薬を使う量や回数が劇的に減り、コストダウンとなります。ところが、やがて殺虫タンパク質への耐性を獲得した害虫が増え、段々とその効果が薄れてきます。そのために使う農薬が再び増えるので、結局は負担が増えることになってしまうのです」

 また、農薬の吸引による被害も広がっているという。

「Btワタの栽培で広く使われる農薬に、有機リン系の農薬があります。耐性を獲得した害虫に対処するためにどんどん増えていく農薬が、農民の身体も蝕んでいく。インドの多くの農家は貧しく、ゴーグルや防護服を買う余裕もありません」(天笠氏)

 ’01年ごろからインドで爆発的に作付面積を増やしたBtワタは、’05年ごろから徐々に収穫量が減少していった。しかも、いったんBtワタの栽培が定着すると、農家は在来種の栽培に戻ることが極めて困難になるという。「オルター・トレード・ジャパン」の印鑰智哉氏(いんやくともや)によれば、その事情は次の通りだ。

「Btワタ種子の供給元が現地の種苗会社を買収して、Btワタとそれに適した農薬だけを扱うようになります。すると、以前まではあった在来種の種子や農薬を、農家が手に入れることはできなくなる。また、Btワタが普及する間に、在来種の栽培をサポートできる人材がいなくなるという問題も生じています」

毎年買わなければならない「特許種子」


 Btワタに限らず、農家は遺伝子組み換え作物から種子を採って次のシーズンも栽培するということができない。供給元が特許を設定しているためだ。遺伝子組み換え作物を栽培する農家は毎年、種子と農薬をセットで供給元から買わなければならない。そのため貧しい農民は借金をする。

「マヒコ社(モンサント社の関連会社)が販売するBtワタの種子の価格は、在来種よりも25%高い。しかも州によってはBtワタの種子しか買うことができない。干ばつや耐性害虫の出現、収量の低下も起こり、収量が伸びずに販売価格も低迷する中、Btワタ農家は借金の返済ができなくなっていくのです。インド国家犯罪記録局の調査では、自殺する農家は’02年から10年間で17万人に上るとされています。これは借金の帳消し目的が大半と見られます」。「食政策センター・ビジョン21」代表の安田節子氏はこう語った。首吊りや入水、農薬を飲むなどして死を選ぶ農民が続出しているというのだ。

 モンサント社はインド農家の自殺について、ウェブサイトで「(Btワタが)導入された’02年よりかなり以前からありました。農業生産者の自殺の原因は数多くありますが、借金や負債が主な要因の一つであると、多くの専門家の意見が一致しています」と、遺伝子組み換え作物と自殺の増加には因果関係はないと説明している。

 しかし、インド農家の自殺とBtワタの普及はまったく関連がないと言い切れるのだろうか。

 世界では「脱遺伝子組み換え作物」の動きも始まっているという。

「遺伝子組み換え作物は米国やカナダなど北米でうまくいっても、インドのような熱帯では大失敗したと言えるでしょう。しかしその責任を供給元のメーカーは取っていない。インドではBtワタの種子の価格を勝手に決めさせないよう、行政が介入に乗り出しました。アフリカのブルキナファソでもBtワタの作付けをフェイドアウト、つまり漸減(ぜんげん)する方針を決めています」(印鑰氏)

※写真はイメージです
― 消費者が知らない[世界的大企業]の闇 ―




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