ショーンKの学歴詐称問題は身近にある! 慶應、早稲田…詐称に利用されがちな大学とは
経営コンサルタントでDJのショーン・マクアドール川上氏に経歴詐称の疑惑があると「週刊文春」(16日発売)が報じた問題で、川上氏は今月15日に公式サイトの英文プロフィールに記載した学歴に詐称があったことを認め、現在自身が出演する『報道ステーション』や『とくダネ!』などのレギュラー番組の降板を発表。さらに4月にフジテレビでスタート予定だった新番組『ユアタイム~あなたの時間~』の出演も辞退することになった。
有名人の経歴詐称については、過去にも野村沙知代や古賀潤一郎元参議院議員に代表されるように海外大学への留学経験をでっち上げたり、数日間講義を受けただけにもかかわらず「修了」とウソをつくケースが多いが、国内でも経歴詐称あるいは詐称と言えないまでも「騙し」に近い学歴をうそぶくケースがある。
大学の通信教育課程は、遠隔地に住む人や仕事でなかなか通学時間が確保できない社会人のために開設されているカリキュラムだ。年間学費は4年間で100万円前後のところが多く、在籍可能期間も10年以上と長く取られているため、多様な学生が集まりやすい。
だが、通信教育課程は慶應義塾大学や早稲田大学など私立大学のトップ校でも開設しているため、最近では単なる「箔付け」のために入学する若者も少なくない。
慶應義塾大学OB(24歳・経済学部卒)の話によれば、通信教育生の中にはこんな学生がいたという。
「通信教育課程なのにキャンパスに毎日来ている人がいました。聞けば、高校を卒業後、しばらくフリーターを続けた後、26歳で通信教育課程に入学。慶應で開かれているイベントやサークルに積極的に出入りし、人脈作りに励むのが目的だったみたいです。通信だから、と差別していたわけではないですが、彼は『俺は慶應で人脈を作りたい』と堂々と口にする姿は陰で嫌われてましたね」
また、法政大学OG(27歳・キャリアデザイン学部卒)によると、こんなケースも。
「私が在籍していた当時はキャンパス内で中核派(新左翼セクト)の学生運動が活発でした。そのメンバーの中には長期間学内で活動をするために通信教育課程で入学している人もいました。ただし、今ではみんな退学になってしまいましたが…」
ちなみに、通信教育課程の入学試験は書類審査や面接だけで筆記試験がいらないケースが多く、一般的な学部入試よりも入学しやすい傾向にある。そのため、このような「不純」と捉えられがちな動機で入学する学生が少なくないのかもしれない。
それでも、通信制卒業生は履歴書に「通信教育課程卒業」と必ずしも書く決まりはない。そのため、就職面接では素朴に「慶応卒」「早稲田卒」と口にできてしまうわけだが、それだけでは説明不十分と感じる企業の面接官も多いのではないだろうか。
ただし、通信教育課程は決して「ザル」なわけではない。数日間のスクーリング(通学)に加え、レポート提出など課題も多く、慶応義塾大学など有名大学での卒業率は決して高くない。彼らが一般の学部生より劣っているという見方は早計だ。
聴講生とは、その言葉通りキャンパス内で単に講義を受けるだけの学生であり、出願書類を提出すれば(しなくても)原則的に聴講生証が発行され、講義を受けることができる。そのため単位はいっさい取得できないことが多く、「卒業」や「修了」といったなんらかの証書が付与されることもない。
だが、東京大学をはじめとしてほとんどの大学が社会に開かれたキャンパスであることを標榜して聴講生を募っている。
『週刊文春』の記事によると、ショーン・マクアドール川上氏は「パリ第一大学に留学」とプロフィール上は記載していたが、実際はオープンキャンパスで講義を聴講しただけだった。
プロフィール欄に「留学」と書いてあれば、単位取得を前提とした大学の正規のカリキュラムのもと学んでいると捉える人が大半だろう。彼が経歴詐称と指摘されても反論するのは難しいのは言うまでもない。
これとほぼ近いのが客員研究員という立場。2012年に人工多能性細胞(iPS細胞)を使った臨床応用に成功したと虚偽の発表をして話題になった森口尚史氏は、過去にハーバード大学で客員研究員だった。
客員研究員は、各大学の研究室の責任者に研究をしたい旨を申し出て、それが承諾すればすぐに名乗ることができる立場。修了証や卒業証書といった類のものはないにもかかわらず、なんとなくその大学で学んだことをプロフィールに記載することができるのだ。
特にハーバード大学のような海外の有名大学の場合、その大学名がプロフィール欄に書かれているだけで「なんかスゴい」と思ってしまう者が出てきてもおかしくないだろう。だが、実際は聴講生、研究生ともにその大学に「ちょっと絡んだだけ」というのが実態なのである。
このように、古くからある夜間学部や二部だけでなく、有名大学には周囲から誤解を招く学歴が生まれやすい制度が存在する。
他人の学歴に注目が集まっている今、川上氏のスキャンダル発覚につづいて、有名人の学歴詐称が今後次々見つかってもおかしくないだろう。
<文/日刊SPA!取材班>
国内大学でも存在する経歴詐称
通信教育課程を隠して高学歴アピール
聴講生・研究生は「ちょっと絡んだだけ」
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