音だけの世界で戦う「ゴールボール」の解説・実況は骨伝導スピーカーだった!
会場となる体育館には選手と関係者があふれ、それなりににぎやかです。スタンドに何十人かぶんの荷物を置いてあったので、お客さんもいるのかしらと思いきや、それは選手の荷物とのこと。会場全体で100人くらいはウロウロしていますが、「大半は選手」といった感触です。ただただ観にきたという人は僕も含めて20人とか30人とかくらいでしょうか。
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しかし、人数が少ないからといって悪いことばかりではなく、むしろゴールボールにとってはイイ面もあるようです。この競技、視覚に難を抱える人がやることを前提に、中に鈴が入ったボールを使って、音でボールの位置を探るのですが、その音はお客さんが多いと聴き取りにくくなってしまうのです。歓声なんて上がろうものなら、それだけ聴き取りは困難になります。その辺を大会関係者も警戒しているようで、全員で拍手しても大した音量にはならない人数に観衆に対しても厳しいお達しがあり……
こっちもマナーのさじ加減がわかりませんので、息を殺しながら見守ることにします。当然ながら、場内アナウンスなどもありません。競技によっては試合中ずっとスタジアムDJがしゃべっているようなものもありますが、ゴールボールはひたすら静かです。審判の吹く笛の音と、選手たちの声、そしてボールがバウンドする音と揺れる鈴の音。むしろカフェラテでも飲みながら、落ち着いた空気で見守るような静けさです。
しかし、さすがにそれではつまらないだろうと観戦者への気遣いもされていました。何と、この大会では骨伝導スピーカーを用意しまして、カサカサ音すら出さないように配慮しながら、解説者によるゴールボール実況を聴かせてくれるというのです。聞いてみましたところ、ゴールボールの戦術やルールに関する豆知識など、非常に勉強になる放送内容です。なるほど、パラリンピック競技ともなると、いろいろな気配りというのが自然に生まれるのですね。普段から、自分の不自由だったり、他人の不自由だったりを意識している人は、察するチカラが違います。
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選手たちはまったく何も見えないように目隠しをしてスタンバイ。真っ黒なアイマスク状の目隠しの下に、目の周りをベッタリと塞ぐバンソウコウのような目隠しもするという二重の仕掛けで視界を完全にゼロにします。審判も念入りに目隠しをチェックし、そこからは音だけの世界での戦いへ。(次回へ続く)
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『自由すぎるオリンピック観戦術』 スポーツイベントがあるごとに、世間をアッと言わせるコラムを書き続ける、スポーツ観戦ブログ『フモフモコラム』の中のひとによるオリンピック観戦本 |
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