軍師・参謀を志す人のために
発行サークル:軍師・参謀を志す人のために(http://gunshi.world.coocan.jp/) 発行者:穀城山中樵客(こくじょうさんちゅうの しょうかく)
孫子や司馬遷、マキアヴェリなど古今東西の思想をもとに、軍師や参謀の手法や技術をレクチャーする実用的小冊子として、すでに25巻までまとめられている。
Vol.24のテーマは「大衆を扇動して人々を自分の思うとおりに動かしていく」といったもので、大衆扇動においてナチスドイツのゲッベルスが用いたプロバガンダを詳細に分析し、現代での応用例を列挙。
そして、
「大衆の中に鬱屈し、不安定な状態のまま強い圧力を持って溜まっている感情をとらえ、そのエネルギーをある方向へ一気に噴出するよう仕向ける」ゲッベルスの手法が、現代に改めてその機が熟していると考察。著者はそれにイギリスのEU離脱投票時の状況を例示したが、直近ではドナルド・トランプの大統領選でも似たような光景があったと言える。さらに次の章では、それがパターン化していずれ無力化する過程について、館林藩士の岡谷繁実が著した「名将言行録」を例に解説している。
また、最新のVol.25は著者が夏コミで
テレビ局からの取材を受けた際の対応の失敗について一冊を通して反省し、とるべきであった策を検討するという異色の構成だ。
リーダーになることばかり重視される昨今、あえてそれを支える軍師や参謀になるための道程を追求し続ける著者の思索は止まることを知らない。
発行サークル:綾波書店(@ayanamisyoten) 発行者:綾波書店、△×△×番長
「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」に対して与えられるイグノーベル賞。研究成果はれっきとした科学に基づいた素晴らしいものも多いが、いかんせんノーベル賞のパロディというコンセプト上、半笑いで扱われがちだ。そんなイグノーベル賞受賞者を一人ひとり直撃し、真面目にインタビューしたシリーズが本書である。
Vol.13では、ゆで卵を生卵に戻す研究で化学賞を受賞したオーストリア研究チームの一員・グレゴリー・ワイス氏、ハチに刺された部分でどこが一番痛いかという研究で生理学および昆虫学学賞を受賞したミカエル・スミス氏の二人が掲載。
中でも、
研究のために全身をハチに刺させたというスミス氏との問答は読み物としても興味深い。刺されたら最も痛い場所について
「上位二つは鼻腔と上唇、三番目が陰茎」という新たな知識ももたらされる上、3回目の実験の時点で
「こんなの二度とやりたくなかったんです。しかし、ねぇ、データを取らなきゃいけない時は、そうしなくてはならないんです」と率直に吐露する場面も味わい深い。科学者たちの姿勢からは、研究に優劣などないことが窺うことができる。
煙遊びと煙薬 Vol.4
発行者:青井硝子(http://aoi-do.com)
最後を飾るのは、もはや奇書を通り越して「禁書」に近いと言えそうな「煙遊びと煙薬」シリーズの最新刊。
著者で小説家・発明家の青井硝子氏は軽トラックを改造した移動住宅に住みながら、そこらへんの雑草を吸って酩酊するというライフスタイルを送る中、
偶然発見してしまった”とある作用”を持つ草の数々を「煙薬」、「アヤワスカ(幻覚茶)」として発信している。
今回のVol.4は、栽培法の研究や種の厳選、体への入れ方などを試行錯誤した末、ついに幻覚作用を確認したアヤワスカの体験談をまとめたものだ。原料の草は麻薬取締法で規定された「麻薬原料植物」以外を使用しているため違法ではないが、政府からの指導が入った場合はすぐに廃棄する意思も同時に示している。
「飲んでから50分でカルチェラタンのステンドグラスのような曼荼羅模様が出てきて」、「これなんてアトラクション? ディ●ニーいらないじゃん!」、「まぶたの奥から次元の狭間があらわれた」などと超危険な文言のオンパレードに、読み手側は不安にさせられる。
だが著者はこれらを享楽のためではなく
「行き詰まりを感じている人や社会にとって、これ以上ない霊薬」(原文ママ)と強気な姿勢を保っており、
アヤワスカのレシピをクックパッドに掲載するという暴挙(?)まで敢行。さらに巻末には「草花を育てるときにトリプトファンを吸わせて催幻覚性のある草を生成する」という、スレスレな手法まで紹介されている。
「サイコアクティブ(向精神)道を極めるべく協会立ち上げに勤しんでいる」という著者。あらゆる意味で、今後の刊行を見守りたい本である。
法律スレスレの「幻覚茶」精製法が詳細に綴られている
ここまで紹介したのはほんの一部。
あいにく編集Aが極度の腰痛によりスペース巡回を途中で断念したこと(通常は一巡して目についたものを買う、二巡目で再度チェック、三巡目で取りこぼしを見つける)、あとは著者と連絡が取れないなどの事情で残念ながら紹介できなかった本も多い。
ここにとどまらない奇書・珍書を知る人は、自薦・他薦問わず連絡をいただきたい。 〈文・編集A〉