金正男氏にインタビューした記者が思いを語る「SPA!を読んで『面白い』と話していた姿が忘れられない」
「彼は父親や北朝鮮の体制については慎重に言葉を選ぶ一方、自分自身についてはかなりあけっぴろげでした。平壌の高級ホテルで起こした『スキャンダル』や、自分の女性遍歴も否定しない。日本に密入国した事実も認めて、協調性の高い日本人の国民性を賞賛していました。もっとも、2001年5月に偽造旅券で日本入国を図って失敗しテレビで顔をさらされてしまった件については、実のところ完全には吹っ切れていなかったようで、その問題に触れると少し反応がつっけんどんになるんです。そんなこともあろうかと、『SPA!』の金正男特集をコミュニケーションを和らげる小道具に使おうと持って行ったのです」(五味氏)
すると正男氏は、特集を読んで「面白いね」と話したという。
「著書の中ではあの特集のことを『ギャグ企画』なんて書いてありますが、あれは編集者が加えた表現。単なるギャグであれば、失礼で相手に見せられません。ノリは軽いけど、実はごくマジメな企画だと私は思っていました。その特集を、金正男氏は非常に面白がってくれたのです。ユーモアのセンスをSPA!読者と共有していたことの証と言えるでしょう。SPA!を読んで嬉しそうにしていた姿が、忘れられません」(五味氏)
拉致問題や核実験などで恐ろしげな北朝鮮のイメージとはかけ離れた好人物として、日本国民にとっても貴重な立ち位置にいた金正男氏。五味氏も、彼がこう着状態の日本と北朝鮮を心情的に繋ぐ存在として期待していただけに、肩を落とす。
「本の出版以降は連絡も切れていたので、予兆のようなものは感じませんでした。彼は権力者の息子として生まれながら、不幸な生い立ちでした。人なつっこいところもありました。警戒心が薄いところもあり、今回の事につながったのかもしれません。北朝鮮との関係はわかりませんが、韓国での報道のように本国の指示があったということなら、意見の違う、しかも海外にいる人を狙うというのは信じがたい行為です」(五味氏)
数少ない「開かれた朝鮮人民」であり、日本でもたくさんのファンがいた金正男氏の冥福を祈りたい。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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『父・金正日と私 金正男独占告白』 日本への不法侵入事件の顛末、正恩との対立、彼を保護している中国、北朝鮮のあるべき姿について率直に語る。 |
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