更新日:2022年08月30日 23:57
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安倍政権に“96億円カツアゲ”された今治市、地元住民の声【加計学園問題】

なぜ獣医学部なのか……住民には何の説明もなし

 獣医学部設立をめぐる説明不足も不安を招いている。B氏は「大学誘致自体は、今治市政が長年取り組んできたことです。でも、獣医学部設立が果たして今治市のためになるかどうか……」と表情を曇らせた。
中村時広・愛媛県知事

中村時広・愛媛県知事は今年4月の会見で加計学園について「内閣府から助言を受けた」と発言。内閣府の藤原豊審議官はこれを否定

「内閣府とともに加計学園建設を進めている今治市の企画財政部は、『年間20億円の経済効果がある』などと発表していますが、加計学園の具体的な事業計画については、市の担当者も実はよく知らないのです。市議会にもまったく説明がありません。獣医学部建設での建築の見積もりや図面も提出されていない。『世界でも先駆的な獣医学部をつくる』という話なのですが、教授陣すら誰であるかもわからない状況です。他大学をリタイアした先生や、まだ経験の浅い若手の先生が来るとも聞いていますが、詳しいことは知らされていません」  今治市出身の愛媛県議である福田剛氏も説明不足を指摘する。 「加計学園の獣医学部設立については、愛媛県も最大で約30億円を支出するという話がまことしやかに流れていますが、県の地域振興課に問い合わせても『今治市からそうした要請は今のところ来ていない』とのことです。我々のまったく知らないところで、話がどんどん進んでいるようです」  おそらく、国家戦略特区での他の大学設置の事例と同様に、市や県で共同負担をするというプランを国がトップダウンで決めてくるというやり方なのだろう。 「県議会にろくに説明もしないまま建設だけが進むというのは、いかがなものかと思います。昨年11月に、菅良二・今治市長に県議らが呼ばれ『加計学園についてよろしくね』とは言われましたが、それ以降は連絡なしです」(福田氏)  さらに地元では「そもそも、なぜ獣医学部なのか」という疑問の声も上がっている。 「今治市周辺は牧場などが少なく、むしろ造船や繊維など、全国有数の工業地域です。工科大学ができるなら地元にも大きなメリットがあると思うのですが……。獣医学部では学生が集まるのかどうかの見通しもなく、卒業したとしても就職口がないので外に出ていってしまいます。やはり『加計ありき』ということで獣医学部だったのかもしれません」(同)  前出の黒川氏も呆れ顔でこう語る。「市民に対する説明会が行われたのは、今年4月に入ってから。そのときはもうすでに学校建設が始まっていました。『なぜもっと早く説明会をしなかったんだ』と、多くの市民が疑問に思っています。民進党の調査チームが5月19日に今治市に来た際も、市の担当部署は聞き取りのための面会を拒否。建設現場の職員にも、『敷地の中には一歩たりとも入れるな』と上から指示が出ていたそうです」。  さらに地元住民たちにとっては、獣医学部の「最先端研究」も不安材料の一つだと黒川氏は言う。 「バイオラボではウイルスや病原菌の研究を行うという話です。『バイオセーフティレベル3』という、最高レベルのひとつ下、例えばSARSなどかなり危険な病原菌を扱う施設になるそうです。それについても地域住民にはほとんど説明がなく、市議会でもこの問題はたった2分しか語られませんでした」  国会だけでなく、建設地でも異論・不満が高まりつつある加計学園問題。自身の「意向」が、安倍総理の首を絞めることになりそうだ。 取材・文・撮影/志葉 玲 写真/田中龍作 産経新聞社 時事通信社
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