ジョニー・エースの“A”のカード――フミ斎藤のプロレス読本#044【全日本ガイジン編エピソード13】
アメリカ人レスラーの多くは、オールジャパンと契約することができればロンジャビティーlongevity(長寿、長生き、継続期間、長期在任)を手に入れることができると考えている。
エースはオールジャパン以外のリングにはまったく興味がないから、アメリカのレスリング・ビジネスの動きがものすごく遠いところのできごとのように感じられる。
“A”のカードは、ザ・ファンクスのラッキー・コインのリメイクである。1980年代前半、ドリーとテリーのファンクスはふたりの似顔絵が描かれたオリジナルのシルバー硬貨を観客席に投げ入れていた。
非売品のグッズだったから、これを手に入れるためにはせっせと試合会場に足を運ばなければならなかったし、チケットを買って試合会場に行っても、ちょうどいいタイミングでちょうどいい場所に立っていなければファンクスからのプレゼントは空から舞い降りてこなかった。
エースは“A”のカードをひとつの時代の“おまけ”にしようと考えている。クラッカージャックのおまけと同じだだから、試合を観にきたファンだけにそれを当てるチャンスが与えられる。
観客とともに成長し、観客とともにトシをとっていくこと。エースは“テリー・ファン道”を歩もうとしている。
カードはハート、ダイヤ、クラブ、スペードの4枚。まんなかには“ACE”の3文字が綴られている。4枚のカードを全部集めるのは、おそらく不可能に近い。エースは一歩ずつ――カードは1枚ずつ――ゆっくりと伝説づくりに励んでいる。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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