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まるでZ型の「三遠南信道」はなぜ遠回りしてまで難所を通ることになったのか?

 草木トンネルを過ぎると、国道152号線は天竜川の支流に沿った険しい地形を縫って南下するが、三遠南信道は水窪(みさくぼ)から西寄りにルートを取り、国道151号線に沿って南西へ向かう。うち佐久間-東栄間は2年後に開通予定だ。  なぜか1区間飛んで鳳来峡インターから先は5年前に三遠トンネルが完成し、すでに新東名・浜松いなさJCTに接続している。

浜松いなさJCT

 このように三遠南信道沿いの現況は、一部で高速道路規格のトンネルが開通済みかと思えば、乗用車のすれ違いも困難な林道を通らねばならない区間もあるという状態で、牛歩で建設が続いている。予算が付かなければ建設が進まない国道扱いの高速道路だけに、全線開通目標年度も未定。予算がダラダラと使われつつ、地域の利便性の向上もダラダラとしか進んでいないのであった。  三遠南信道は、ルート設定自体があまりにも不合理だったのではないか? そもそも、なぜ青崩峠を通ることになったのか。  なにせ三遠南信道は、飯田と浜松を結ぶ観点からすると、「Z」型を描いている。なぜ無駄に遠回りしているのか? 飯田山本インターから国道151号線に沿うルートにすれば、約20km近道になり、青崩峠のような難所を通る必要もなかったはずだ。  このルートが正式に決まったのは昭和62年、ちょうど30年前である。当時、高速道路のルートは、建設省道路局が闇の中で決定し、詳しい理由は一切開示されなかった。まるで「天の声」だった。

三遠南信自動車道の事業概要(国土交通省中部地方整備局資料より)

 推測するに、国道152号線の不通区間・青崩トンネルを計画した際、「せっかくだからこれを高速道路に」ということになったのか。ルートをZ型に遠回りさせることで、東西方向の道路が極端に未整備な南信地方の地域振興を図る意味合いもあったのかもしれない。  しかし、高速道路は本来、速達性が命のはず。こんなルートでは時間短縮効果が乏しく、そのぶん経済効果も落ちる。  浜松からの帰路、国道151号線を通ったところ、鳳来峡インターから中央道飯田山本インターまでの所要時間は約2時間だった。将来、三遠南信道が全線開通しても、遠回りルートの上に制限速度が時速60~70kmと低いため、所要時間は30分程度しか短縮できないだろう。  つまり、明らかに愚かなルート決定だったわけだが、一度決まったルートが変更されることはまずない。「地盤が悪すぎてトンネルが惚れない」といった技術的理由でもない限り……。 取材・文・写真/清水草一(道路交通ジャーナリスト) 【清水草一】 1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com
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