天空の城・竹田城を訪れて改めて考えた「高速道路空白地帯に高速道路は必要なのか」問題
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
近年、「天空の城」という単語をよく聞く。その代表格が、兵庫県朝来市にある竹田城だ。
私が竹田城を知ったのは30年ほど前。山城ファンだったので矢も楯もたまらず訪れ、山頂部に連なる石垣の風情に感動した。「日本にこんな城があったとは!」と思ったものだ。ただ、当時この付近は、かなり交通の便が悪かった。クルマだと、京都から国道9号線をクネクネ来るしかなかった。
兵庫県と言えば神戸を県庁所在地とする先進県だが、南部と北部では大違い。南部には山陽道や中国道など多くの高速道路が走るが、北部は国土開発幹線自動車道、つまり高速道路の空白地帯だ。高速道路の空白地帯というと、真っ先に思い浮かぶのは山陰地方だが、そこには山陰道というれっきとした国幹道の計画がある(未完成)。一方兵庫県北部にはそれもない。
ところが、先日約25年ぶりに竹田城を訪れたところ、すっかり様変わりしていた。
この付近には、17年前に姫路を始点とする播但道(兵庫県が作った自動車専用道路)が開通したが、現在は舞鶴若狭道から枝分かれした北近畿豊岡道も完成している。しかも北近畿豊岡道は、途中のトンネル区間を除き料金無料。播但道で姫路から、竹田城最寄りの和田山インターまで利用すると1000円だが、北近畿豊岡道なら、舞鶴若狭道の春日から和田山まで300円で済む。
この道路が完成したのは2006年。高速道路マニアの私も、注目しているのは主に国幹道で、こういった地域幹線道路はノーマークだった。浦島太郎気分である。
その影響もあってか、かつては知る人ぞ知る存在だった竹田城が、今では「日本のマチュピチュ」と呼ばれ、観光客が大挙訪れるようになっている。かつては山頂近くの駐車場まで自家用車でアクセスできたが、近年はクルマをふもとの駐車場に置き、自力で登るなどするしかない。今回は時間もなかったので、城の対面の山上にある展望所(立雲峡)で満足した。
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この北近畿豊岡道、現在は和田山から日高まで開通しており、さらに6km先の豊岡南までが事業中だ。その先は、京都府宮津市から鳥取市まで、日本海側の高速道路空白地帯を埋めるべく、山陰近畿道が計画されている。こちらも国道なので料金は無料。現在はまだそのごく一部がまだらに開通しているのみだが、猛烈にのどかな風景の中、突然ドーンと部分的にバイパスが完成していてちょっと驚かされる。
山陰道も、多くの区間は国道のバイパス(料金無料)として建設されている。暫定2車線の対面通行で安全面には問題があるが、有料だったら地元のクルマはまず利用しないし、交通量的には2車線で十分だ。ただ、国道ゆえに予算がつかないと建設できず、完成には非常に時間がかかる。山陰道および北近畿豊岡道、山陰近畿道が全線開通するのは、いつになるかまったくわからない。
NEXCO所管の高速道路なら、借金で作って料金収入で返すため、建設速度ははるかに速いが、一般道がスイスイ流れる過疎地域の場合、100円でも料金を取ったらもう交通量はガタ落ちになり、無用の長物化してしまうのが現実だ。
じゃ高速はいらないのかと言うと、災害時の代替路がないとか、観光振興が遅れるといったマイナス面も無視できない。兵庫県北部や山陰地方は、いまだ便利とは言えないが、牛歩でも無料の高速道路の完成を待ったほうが、地元には恩恵となると私は考える。また、現在も利用が超低迷している北海道などの、いわゆる”熊しか通らない高速道路”も、可能ならば料金を無料か大幅に値下げして、役に立つ存在にすることが望ましい。財源の確保が猛烈に難題ではあるが。
取材・文・写真/清水草一(道路交通ジャーナリスト)
【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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