更新日:2022年09月25日 10:50
カーライフ

女性はクルマで男を判断した…速いクルマ、カッコいいクルマに乗ってればモテた80年代クルマモテ論

80年代の若者といえば、何はともあれクルマ。いいクルマに乗ることは、若者のみならず男の憧れであり、今では考えられないステイタス。そんな時代に青春を謳歌したカーライフの申し子による80年代クルマ回顧録(文/清水草一) 清水草一 私が免許を取ったのが1980年。つまり80年代カーライフの申し子と言ってよかろう! なにせ当時のクルマってのは一種のスター。カーライフといえば、それは誰のものであってもスターの生活みたいなもので、地味だろうが貧乏だろうがみんな関心を持ったし、話題の中心だったんだよ!  というか、当時の若い男の生活は、クルマを中心に回っていた。生活における太陽のようなものですね。  そして特筆すべきは、女性たちもクルマを非常に重視していたという事実だ。今じゃ考えられないが、当時の女性は、クルマを男の価値の一部として見ていたのだ!  70年代に書かれたフランチェスコ・アルベローニの名著『エロティシズム』は、女性が男性を判断する材料の一つとしてスポーツカーを挙げているが、80年代の日本でも女性はクルマで男を判断した。もちろん全部じゃないけど、今でいえば学歴とか就職先くらいの重みはあった。東大卒ってだけで、誰だって一目置くよね? いいクルマに乗ってるってことは、それくらい重要なことだったのだ。  では、女性がなぜ男のクルマを重視したか。  いいクルマで迎えに来てくれる男は、一流企業の社員みたいなもの。そういう男と付き合うことは、女性にとって自分の価値を高めてくれる要素だったのだ。よって女性たちは、いいクルマに乗っている男を、それだけでかなりプラス評価した。思えば夢のような時代でした……。  では、男たちはモテるためにいいクルマに乗ったのか?否である。それはオマケのようなもので、男がいいクルマに乗りたがったのはズバリ、スピードへの情熱からだった!  当時、高級車への憧れもあるにはあったが、なんといっても重要だったのは速さだ。高級車なんてオッサンが乗るもので、若者はひたすら速いスポーツカーに憧れた。今でこそスポーツカーは女性に一番嫌われる車種だが、当時はもっともモテたのだ!  ただ当時は、今と比べても日本は貧乏で、国産車はドングリの背比べ的に遅く、速いクルマを買うのは極めて困難。よって多くの若者は、「速そうに見えるクルマ」でその欲望を満たした。それがスペシャルティカーである。  私が最初に乗ったクルマは、日産ガゼール。シルビアの兄弟車で、ベースはバイオレットという平凡なセダンだったが、カッコが速そうだったのでヒット! 私も1800ccの平凡なエンジンをブチ回して爆走しました。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1365314
日産ガゼール

免許を取って初めて乗った(父親の)日産ガゼール

 そんな我々の前に彗星のごとく現れたクルマ、それが初代ソアラだった。光り輝くカッコいいスタイルに、2800cc170馬力のエンジンを積み(当時にすれば想像を絶する大馬力)、お値段は298万円! 当時、国産車で約300万円なんて目ン玉が飛び出るほど高かった。日本なんてそんなもんだったんだよ!  ちなみに外車は雲の上の存在で、視界に入ってませんでした。  私は周囲の友人たち同様ソアラに憧れまくり、父親にも「ソアラはいいよ~」と言いまくった。その甲斐あって父はホントにソアラを買った! 別にねだったわけじゃなく、オッサンではあっても父も男。カッコいいクルマへの憧れは十分あったのだ。そういう時代だったんです。
トヨタ・ソアラ

女子大生にモテモテだった(父親の)トヨタ・ソアラ。当時は週末、青山通りをクルマで青山一丁目に向かう際、赤坂付近で上りカーブに差しかかると、一面に赤いテールランプが。どこに行くにも渋滞してましたが、利便性を考えて地下鉄に乗ったら負け!と思い、辛抱しました

 父のソアラが納車されると、大学生だった私はさっそく借りて、ゴルフサークルの練習に乗っていきました。  ソアラを見た女子大生たちは大コーフン! 「乗りたい! 乗りたい!」と殺到した。ウソじゃないよ、ホントだよ! 私は「4人までしか乗れないんだよね~」ともったいぶって、定員いっぱい女子大生を乗せて、そこらをグルっと一周した。本当の話です。  80年代、速いクルマはモテたわけですが、速く走ることもまたモテた。今じゃクルマで飛ばすなんて「バッカじゃないの?」「怖いから降ろして!」と言われるのがオチだが、当時の女性は飛ばさない男を腰抜けと見なし、飛ばす男を高評価したのだ。今とまったく逆です。  私は地味なおとなしい性格でしたが、ハンドルを握ると人が変わるタイプで、「何人たりともオラの前を走らせねえ!」と爆走しました。いつでもどこでも全開で飛ばしていたのですが、当時の女性はそれを大変喜んでくれました。ゆっくり走っていると「なんで飛ばさないの?」とせがまれたし、「前のクルマ全部抜いて!」と言われたこともある。隔世の感……。
930型ポルシェ911タルガ

父親の930型ポルシェ911タルガと。初めてドリフトをかましたのが、このポルシェ。アクセル、クラッチ、ブレーキと、すべてのペダルが重い半面、ギアはバターにナイフを入れるように曖昧。「今、何速だっけ?」と何度も混乱しました

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カーライフの晴れ舞台は、スキードライブ
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中

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80's青春男大百科

マイケル富岡、向谷実ほか80年代を象徴する人物たちの貴重な証言。さらにはカルチャー、アイテム、ガジェットで、世の中がバブル景気に突入する直前のあの時代を振り返る!

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