更新日:2017年11月15日 17:44
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葬儀屋さんは見た!お葬式のときの「揉めごと」「相続トラブル」

 純金で作ると柔らかくて叩いたときに凹んでしまう可能性があるため、仏具として認定されないからだそうです。  以前、税理士さんと話したときに、「この理屈で行くと墓石を金で作っても相続税控除になるのか」ということが、冗談半分で話題に出たことがあります。結論は税務署が判断するしない以前に、「絶対に盗まれるだろう」という当然の結論でした。  さて、冒頭でお話したお葬式の場でのいざこざについてです。  取っ組み合いや、ののしり合いは、お金持ちの葬儀の現場に限定すれば、ほとんどありません。 大体、揉めるときはお金が原因です。しかし、資産家は弁護士や信託銀行を通してきっちりした遺言書を作っておくケースが多いです。最近は終活ブームということもあり、さらにその意識は高まっています。  遺言書がある以上、亡くなってから遺族が騒いだところで、誰がいくらもらうという結論がひっくり返るわけではありません。故人の遺志に不満があったとしても本人は亡くなっていますから、文句の言いようもありません。あえてみっともない醜態をさらすことは無駄なのです。  仮に遺族同士の交渉の余地が残っている場合でも、お葬式に影響があるような暴れっぷりは今後の交渉の際、マイナスになってしまうでしょう。ちなみに葬儀の進行を妨害するのは刑法188条条違反です。適用されることはめったにありませんが。この場合もわざわざ揉めることは得策ではないのです。  とはいえ、表面上いざこざがなくても、親族がそれぞれ内心どう思っているか、ということに関して葬儀屋さんは気づいています。葬儀を滞りなく終わらせるためには、誰がキーパーソンか、どういう派閥構成になっているか、ということを一応押さえておかなくてはなりません。そのため葬儀屋さんは漂う「空気」にも敏感になっています。  葬儀前の歓談を行っている座席の位置、言葉の言い回し、話しかけている声のトーンなどからなんとなく関係性が分かります。 例えば誰からも好かれそうな好人物にもかかわらず、どうも周囲の扱いが冷たいので不思議に思っていたら、その人物が婚外子だったというケースがあります。  どのケースでも「くせ者」は、法定相続人その人ではなく、法定相続人の配偶者であることが多いです。直接の血縁はないが、間接的な利害関係はあるからですね。  他には一般参列席で尋常ではないくらい嘆き悲しんでいる女性がいて、それなのに親族が誰もその人のことを知らないという「ワケあり」のケースもあります。一方で遺産のほとんどを公共の組織に寄付したにもかかわらず、親族から愛情を持って見送られる方もたくさんいらっしゃいます。 「葬儀にはいろんなドラマがある」という言い方をする葬儀屋さんがいます。 私はドラマと呼んでしまうと人の死が軽くなると考えているのでそういう言い方は好みません。ただ、杜甫の詩に 「棺を蓋(おお)いて事定まる」という一節があるように、お葬式はその人がどんな生き方をしたか、総括される場であるというのは間違いないでしょう。 <文/赤城啓昭> 【赤城啓昭】 月間45万PVの「考える葬儀屋さんのブログ」管理人。現役の葬儀屋で、1000件以上の葬儀を担当。お葬式の担当のかたわら、葬儀業界のマーケティング分析、セミナー・企業研修・大学・専門学校での講演活動、エンディングノートの制作なども行う。ブログの内容をもとに、新たに約7割を書き下ろした初の著書『子供に迷惑をかけないお葬式の教科書』が好評発売中
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