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麻原彰晃の散骨は国がやるべき?葬儀業界から見た懸念

 オウム真理教元代表・麻原彰晃こと松本智津夫の死刑が執行され、彼の遺骨の取扱いを巡って激しいやりとりが起こっています。
麻原彰晃

『マハーヤーナ・スートラ―大乗ヨーガ経典』(麻原彰晃・著 ※絶版)

 その背景を『子供に迷惑をかけないお葬式の教科書』著者である葬儀ブロガーの私、赤城啓昭が葬儀屋さんの視点で読み解いてみました。

葬儀屋が考える「散骨とは何か」

 問題を整理するため現在(2018年7月17日時点)までの出来事を、報道を元に時系列で振り返ってみます。 7月6日 ・麻原彰晃の死刑が執行される。 7月9日 ・府中市の火葬場で火葬される。遺骨の引取人として生前麻原が四女を指名していたが、四女は遺骨の受け取りを拒否。遺骨は東京拘置所に安置されている模様。 7月11日 ・四女の代理人の弁護士が記者会見。「遺骨をパウダー化し、太平洋に散骨してほしい」「散骨費用は国が負担して欲しい」と要請する  散骨とは遺骨を粉状にして海など墓地以外の場所にまく行為です。代理人の弁護士は「パウダー化」という表現を使っています。確かにその通りなのですが、葬儀業界内では「粉骨」と呼んでいます。  散骨の際、粉骨にするのは必須です。  散骨という行為自体、法的にはグレーな行為です。法律上、遺骨は墓地に納めるのが原則です。例外的に「節度を持って散骨を行うなら黙認」というのが国の姿勢です。  遺骨であると分かる状態で撒くことは節度を守っていると言えないため、粉骨を行うのです。

散骨に実際に立ち会ってみて感じたこと

 私は一度、海上の散骨に立ち会ったことがあります。まず粉骨した遺骨をいくつかに分けて紙に包みます。そして港から船に乗って沖に出ます。1時間くらい航海すると周りは水平線しか見えない状態です。  そこで、お花といっしょに遺骨を海に撒きました。船は故人が生前好きだったジャズのナンバーを流しながら、ゆっくり沈んでいく遺骨を包んだ紙の周りを、ゆっくり回ります。  遺骨が完全に沈んだのを見届けてから、港に帰りました。  この体験をするまで、遺骨はお墓に納めるものという考えだったので、散骨ってどうなんだろう?という気持ちが正直ありました。しかし実際に体験してみると、静かな感動を覚えました。おそらく命は海から生まれて、また海に還っていくというのが、崇高なことに思えたからだと思います。
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なぜ四女側は散骨を希望するのか
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