まな板など台所用品にはじまり、靴、歯ブラシ、文房具やタオルなどなど、“抗菌”を謳う商品は世間に数多く出回っている。抗菌グッズが世に出たのは1990年代ごろで、世界一のキレイ好きといわれる日本人の好みにあって大ブレイクし、瞬く間に定番健康グッズの座を獲得。日本ほど抗菌グッズが多い国は他になく、現在も毎日のように新商品が発売され続けているが……。 　実はこの抗菌グッズも専門家から否定的な見解が多い商品のひとつだという。なかでももっとも多いのは、「抗菌グッズは良い細菌も殺してしまう」といった声だ。 「そもそもヒトの体は、常に100兆を超す細菌で溢れかえっているんです。そのなかには悪玉菌の増殖を抑えて、健康のバランスを取ってくれる良い菌も少なくない。抗菌グッズはこういった善玉菌まで殺してしまい、逆にアレルギーや風邪などの病気を引き起こす原因になりかねません」 　しかも、悪性の菌のなかには抗菌グッズに対抗して変化する、「耐性菌」と呼ばれる種類の菌が存在することも無視できない。 「いったん耐性菌が生まれると、ヘタをすれば抗生物質ですら効かなくなる可能性があります」（同） 　確かに抗菌作用はあるといえそうだが、抗菌グッズが元でアレルギーを引き起こしては本末転倒だろう。もちろん、O157のように深刻な症状をもたらす細菌もある。基本的には食中毒にさえ気を付けていれば、まず除菌など必要ないのだ。 ※　※　※ 　むろん、今回紹介した商品を買うのも買わないのも個人の自由だ。だが、なかにはかえって健康被害を引き起こす可能性を含むものも少なくない。科学的な根拠をしっかり踏まえた上で、買い物するようにしたい。 ＜取材・文／伊藤綾＞
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X（旧Twitter）：@tsuitachiii