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亡くなった親のスマホが“負の遺産”になる!? ある日、FXの追証で100万円請求され…

高齢者であってもスマホを持つのは当たり前の時代。手軽にスマホを持てる時代になったことで新たな問題も……

 親の死後に遺品や遺産をきちんと処理するのは子供たちの役目だ。しかし、旅立った後に、ロックのかかったスマホや痕跡ゼロのネット口座など本人以外は手出しができないようなものが残されるリスクが増えている。

ロックが開けられず、家族写真もろとも“思い出”が初期化……

 都内で暮らすAさん(男性/40代)が母から父の訃報を伝えられたのは午前1時を回った頃だった。新幹線の始発で実家のある神戸に向かい、日が昇りきらないうちに物言わぬ父と対面。悲しみながらも葬儀社のスタッフと葬式の打ち合わせに入るが、遺影の話題になったとき母が急に「取り出せない、どうしよう」と焦りだした。  ここ数年、夫婦の写真は父のスマホで撮影していた。そのなかに遺影候補があるらしいが、ロックの解除方法が分からないという。Aさんがみるとすでにスマホは工場出荷時の状態になっていた。幸い5年前に撮った紙焼きの集合写真が見つかったため遺影写真は間に合ったが、晩年の思い出の写真がすべて消えてしまった母の落胆は傍からみても大きく、しばらく声がかけられなかったという。  スマホには10回連続でパスワード入力をミスすると初期化する設定にできるものもあり、それを知らずに闇雲な入力を繰り返していると、このような事態に陥ってしまう。  デジタル機器やデジタルデータの遺品、いわゆる“デジタル遺品”がらみの悲劇は、近年老若男女を問わず増えている。デジタル遺品研究会ルクシー代表でフリーライターの古田雄介氏はこう語る。 「最近はデジタル機器が扱いやすくなっているうえ、ネットバンキングやネットショップなどのサービスが充実してきているので、世代を問わず何かしらのデジタル資産を持っていることが珍しくありません。しかし、まだ重要度を低く見積もられているところがあり、Aさんのように対処を誤って悲しい状況に陥ってしまうケースもみられます」
デジタル遺品

デジタル遺品という新たな存在に、どのように対処すればいいのだろうか

FX口座の追証が遺族にいくケースも

 古田氏によると、デジタル遺品のやっかいなところは見えにくさと触れにくさにあるという。 「物質的な遺品と違って実態はデジタルを通してしか確認できない場合、普通は放っておかないような遺品も見過ごされやすくなります」  典型例はネット銀行やネット証券会社の口座だ。とくにFXのような証拠金取引は、持ち主が亡くなった状況によっては負債化して遺族に請求がいく場合がある。「ごくレアケースで、国内のネット証券会社を取材しても業界全体で1年に1~2回あるかないか。額は最大でも100万円を少し超える程度」とのことだが、できれば負いたくないリスクには違いない。  そして、それらの存在を探ろうにも、前述のAさん父のスマホのようにロックが解除できなければどうにも触れられない。 「スマホはパソコン以上にセキュリティが厳重で、ロック解除はキャリアやメーカーも受け付けてくれません。ユーザーIDが分かれば何とかできる場合もありますが、かなり機器を使いこなしていないとやり遂げるのは難しいでしょう」  スマホなどのデジタル機器は、いわば故人のデジタル資産の入り口。その入り口に厳重な鍵がかかった状態ではもう白旗を挙げるしかないというわけだ。そうした“詰んだ”状態のデジタル遺品は、案外、普段あまり使いこなしていない人のほうが発生しやすい側面があるという。 「デジタル機器を使いこなしている人ほど、サブスマホやタブレット、会社のパソコンなどにバックアップデータや利用中のネットサービスの痕跡などが残っている場合が増えます。『ネットはスマホだけ』とか『写真やメッセージはスマホだけ』という人のほうが、解決にいたる道が1本しかなくて打つ手がなくなるリスクは高いかもしれません」
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親世代はネットのライトユーザーが多い
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日刊SPA!編集。SPA!本誌では谷繁元信氏が中日ドラゴンズ監督時代に連載した『俺の職場に天才はいらない』、サッカー小野伸二氏の連載『小野伸二40歳「好きなことで生きてきた~信念のつくり方~』、大谷翔平選手初の書籍となった『大谷翔平二刀流 その軌跡と挑戦』など数多くのスポーツ選手の取材や記事を担当。他にもグルメ、公営競技の記事を取材、担当している

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