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テコンドーで五輪出場を目指す濱田兄弟と異色の空手家・菊野克紀の挑戦

テコンドーの常識をくつがえす戦法で五輪出場を狙う

 菊野選手の闘い方はテコンドーとはまったく異なるものでした。  まず、テコンドーの基本である半身の構えをとらず、空手家として相手に正対します。メインの攻撃も蹴りではなく突きです。まるで異種格闘技戦のように、真っ直ぐ突っ込んでぶん殴るというのが菊野選手のスタイルです。  そのため、相手のリーチが長い蹴り技などは比較的よく当たります。ただ、初弾さえ外してしまえばそこからは菊野選手の距離。どてっ腹に強烈な突きを繰り出して相手を吹っ飛ばします。ポイントは1点ですが、相手のダメージは深刻です。  さらに、驚きの戦術を菊野選手は備えていました。テコンドーでは反則を犯すと1点失う決まりなのですが、菊野選手はこのルールを最大限に活かし、「相手に場外反則を犯させる」という戦いをしていたのです。具体的には、「相手に圧力をかけてひるませ、場外まで押し出し、相手が場外反則で1点失う」ことをメインの得点源にしていたのです。  しかも恐ろしいのは、テコンドーでは「試合中に反則を5回犯すと問答無用で負けになる」というルールがあること。  菊野選手は多少の蹴りを喰らっても意に介さず、とにかく相手に接近してど突き倒し、ダメージで「心を折る」という戦いをしていたのです。心が折れた相手はポイントで勝っていても菊野選手の打撃を受ける恐怖で下がってしまい、場外の反則を犯してしまうのです。

赤の菊野選手、完全に空手家の構え

ど突きながら相手を押していく

ポイントでは負けているけど、ど突き倒す

ポイントでは負けているけど、場外に追いやる

 菊野選手はテコンドー選手としてみれば、素人目に見ても全然大したことありません。蹴り技は乏しく、ディフェンスも薄い。しかし、格闘家としては間違いなく強い。技術では及ばない選手たちを相手に、心をボキボキ折りまくり、結局初参加の全日本選手権で2位となってしまいました。オリンピック階級で日本の2位。「これは本当にテコンドーなのだろうか…?」という率直な疑問すらぶっ飛ばす好結果でした。  むしろ、本番よりも国内代表争いこそがテコンドーの見どころなのかもしれません。日本を代表するテコンドー一家の長兄と、異端の空手家がそれぞれの哲学をぶつけ合う。もしも直接対決があれば、注目の一戦となることは間違いないでしょう。  「三兄妹」にせよ「空手家」にせよ、話題性は十分ですので、本番は少しにぎわってしまうかもしれません。  幸い、今のところ全日本選手権クラスでもフラッと行ってそのまま入れるくらいの穴場ですし、いい話のタネにもなるでしょう。もちろん東京五輪でも比較的見やすい部類の穴場ではあるのでしょうが、「本番ではできればほかの競技が見たい」という正直な気持ちも含めて考えると、本番前に見ておくほうがよさそう。  テコンドーは2020年より、2019年にオススメの穴場だと思います!
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