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テコンドー岸田留佳、可愛い顔して闘争心は男勝り「何がなんでも相手をボコボコにしたい」

 東京の下町にある廃校となった小学校。大正18年に建てられた校舎は趣や情緒があるとも言えるが、明らかに老朽化が進んでいる。薄暗い体育館の風景は、メジャースポーツの表舞台で演出される華やかさとは程遠い世界。そこにミットを蹴る音だけが無機質に響き渡っていた。今回、登場していただくテコンドーの岸田留佳も、この体育館で汗を流す選手の1人。現役女子高生ファイターであり、2020年の東京オリンピックでメダルも期待される超有望株だ。

きしだ・るか

~もぎたて女子アスリート最前線 第27回~

「テコンドーは2つ上の兄がやっていたんです。お兄ちゃんも友達に誘われて始めたみたいですけど。親がその送り迎えをしていて、私も一緒についていくようになったんですね。だけど練習時間の間、ぼーっと待っているのも暇じゃないですか。それで親が“やってみれば?”って軽い気持ちで勧めてきたんですよ。それが小学校2年生、7歳のときですね。お兄ちゃんは今? テコンドーはとっくに辞めちゃいました。そう考えると、私もえらい巻き込まれ方をしていますよね(笑)」

 最初は“習い事”というより“遊び”に近い感覚だった。ところが小3で初めて地方大会に出場すると、何もできずに完敗。ここで持ち前の負けず嫌い精神に火がついたのである。当時の岸田はバスケットボールやダンスも並行して取り組んでいたが、ことスポーツに関しては一番ではないと気が済まない性格だと自分でも気がついていた。

「そもそも始めたきっかけからして偶然誘われたという感じだったから、“強くなりたい”とか“相手を倒したい”なんていう考えはもともとなくて。だけど負けたことによって、“何がなんでも相手をボコボコにしたい”という気持ちが芽生えてきたんです。それに全日本ジュニア選手権でメダルを獲りたいという目標もできたので、“だったら本気でやるか”とコーチと話し合いました。練習自体、小4からは追い込むメニューに変えていきましたね。まずはダッシュや長距離の走り込み。ミットを蹴る回数も倍くらいに増やしましたし。骨折とかもしょっちゅうでした。小学校のときだけで5~6回はしたんじゃないかな。手の指、足、鼻……テコンドーの場合、頭部の防具も顔面部分が守られないですから」

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初優勝は小6の全日本ジュニア選手権


 こうして稽古の鬼と化した少女は、最初に出場した小4時のジュニア選手権で、いきなり銅メダルを獲得する。もちろんこれは大いなる快挙だが、岸田自身はまったく喜びの感情が湧かなかった。それどころか、もっと頑張るしかないと猛反省。その場で改めて気合を入れ直したというのだから恐れ入る。「一番じゃなきゃ意味ないんですよ。目指していたのは金メダルだったので。銀や銅だったら1回戦負けと同じ」と、こともなげに語る岸田。そして翌年はケガで欠場したものの、小6になると全日本ジュニア選手権で初優勝を果たした。

「いや~、本当にうれしかったですね。そこを目標に頑張って練習してきたので。決勝の相手は、オープン大会(公式記録がつかない地方大会)でボコボコにされたこともあるライバルの村上智蓮選手。ちなみに村上選手とは今は階級が違うので、お互いに頑張ろうねって励まし合う関係です」

 高校に入ると、ジュニアの枠を超えて全日本選手権に出場。ここでも岸田は抜群の勝負強さを発揮し、初出場にして初優勝という大金星を挙げる。これで文字通り、国内に敵なしになったのだ。だが不思議なのは、翌16年の大会ではあっさり1回戦負けをしたこと。決して岸田の実力が落ちたわけではなさそうだが……。

「相手は後輩の選手だったんです。今まで3回闘って、コールドで勝ってきたし。ただ、相手ももちろん勝つために努力してきますよね。“絶対王者”みたいな選手にも中にはいるけど、自分は決してそういうタイプではないんです。絶対王者と言われる人たちは、日本を見ていないんですよ。最初から世界しか相手にしていない。世界選手権で金メダルを獲った濱田真由選手なんかがそうなんですけど」

 たしかに大会成績だけを見ると、岸田は優秀な選手ではあるが常勝チャンピオンとは言い難い。小6でジュニア選手権で優勝したあとも、中1で2位、中2で再び優勝、中3で2位と、いささか不安定な軌跡を辿っている。これに対しては、全日本テコンドー協会の小池隆仁コーチが補足説明を加える。

「成長期というのが大きいでしょうね。この年齢の女子の場合、身体が急速に変化していきますから。そこで間合いや動きなどが全部変わっちゃうんです。それまで当たり前にできていたことが急にできなくなることもあるし、そこで選手を辞めちゃう子もいます。対戦相手とだけじゃなく、そういう部分でも闘わなくてはいけないんですよ」

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ファイトスタイルは“男勝りのテコンドー”

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