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アンドレ・ザ・ジャイアント 20世紀の“ガリバー旅行記”――フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100<第51話>

アンドレ・ザ・ジャイアント 20世紀の“ガリバー旅行記”<第51話>

連載コラム『フミ斎藤のプロレス講座別冊レジェンド100』第51話は「アンドレ・ザ・ジャイアント 20世紀の“ガリバー旅行記”」の巻(イラストレーション=梶山Kazzy義博)

 アメリカでのニックネームは“世界の七不思議”ならぬ“世界の8番めの不思議The Eighth Wonder of the World”。

 日本では1970年(昭和45年)の初来日から20年以上にわたり“大巨人”として親しまれた。

 “レッスルマニア3”におけるハルク・ホーガンとのシングルマッチは9万3173人という観客動員新記録を樹立(1987年3月29日=ミシガン州デトロイト、ポンティアック・シルバードーム)。

 全米ネットワークのNBCが放映したプライムタイム特番“サタデーナイト・メインイベント”での同カードの再戦はアメリカとカナダの3300万世帯が視聴し、15.2パーセントの高視聴率をはじき出した(1988年2月5日オンエア)。

 15.2パーセントという数字は過去60数年間にアメリカで放映されたプロレス番組の最高視聴率記録で、30年以上が経過した現在でもこの記録はまだ破られていない。

 アンドレ・ルネ・ロシモフは、フランス南東部の山岳地帯グルノーブル生まれ。アクロメガリーacromegaly(巨人症、先端・肢端巨大症、末端肥大症)という先天性の成長ホルモン過分泌の病気を持っていたため、食事と運動量には関係なく体が肥大化しつづけた。

 少年時代はサッカー、ラグビー、ボクシングなどのスポーツにトライするが、18歳のときにパリでアンドレ“ザ・ブッチャー”ロシモフのリングネームでプロレスラーになった。

 デビュー当時は6フィート7インチ(約2メートル)、245ポンド(約111キロ)という体格だったが、成人後も身長と体重の増加にはストップがかからなかった。

 アンドレは24歳でフランスを離れ、1970年にフランス語圏のカナダ・モントリオールに移住した。“おとぎばなし”のプロフィルによれば、エドワード・カーペンティアが故郷フランスを旅行中に山奥で“木こり”をしていたアンドレを発見してモントリオールに連れ帰った、ということになっている。

 1970年代から1980年代なかばまで公私にわたりアンドレのマネジャーをつとめたフランク・バロアFrank Valoisと無名時代のアンドレをパリで引き合わせたのはカーペンティアだというから、ルーキー時代のアンドレとカーペンティアのあいだになんらかのコネクションがあったことは事実だろう。

 アンドレの“発見者”を公言したもうひとつの人物は、AWAオーナー(当時)のバーン・ガニアだった。

 アンドレとガニアは、アンドレがモンスター・ロシモフのリングネームで初来日したシリーズで偶然、遭遇した(1970年1月、国際プロレス『新春シリーズ』)。

 ガニアはまだ若手だったアンドレにヘビー級ボクサーへの転向を勧めたとされるが、アンドレはプロボクシングにはあまり興味を示さなかった。

 ガニアはその後、アンドレを“試験的”に何度かAWAのリングにブッキングしたが、なぜかレギュラー・ポジションは用意しなかった。

 アンドレのモントリオール時代のリングネームはジーン・フェレJean Ferre(フランス語読みの発音はジャン・フェレー)で、“世界の8番めの不思議”というニックネームがつけられ、公式プロフィル上の身長が7フィート4インチ(約223センチ)に“統一”されたのもこのころだが、じっさいの身長は6フィート11インチ(約210センチ)くらいだったとされる。

 体重のほうはキャリアとともに385ポンド(約175キロ)、445ポンド(約202キロ)、500ポンド(約227キロ)と増加しつづけた。

 モントリールでの数年間はもっぱら1対2、2対3(アンドレのパートナーは身長170センチちょっとのカーペンティア)のハンディキャップ・マッチをこなし、年に数回しかおこなわないシングルマッチではドン・レオ・ジョナサン、キラー・コワルスキーといったアンドレ出現以前の巨人レスラーたちがアンドレの対戦相手となった。

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アンドレにはある“弱点”があった

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