経済効果ゼロの「首都高速日本橋地下化」景観回復のためにそれでもやるの?
では、首都高C1日本橋付近の地下化についてはどうだろう?
老朽化が進む首都高は、5年前、特に傷みが激しい5区間計8kmの造り直しを決定した。日本橋上空を含む竹橋-江戸橋JCT間2.9kmも含まれており、その時点では、現在と同じ高架構造での造り直しを想定。事業費は1412億円となっていた。
ところが昨年、突如「日本橋付近の地下化」案が浮上。先月、具体的なルート案が決まった。
しかし、日本橋上空を覆う首都高の高架は、そんなに醜いのだろうか? それを撤去すればステキな景観が現れるのか?
それに関して私は、以前から疑義を呈してきた。首都高を取っ払っても、出てくるのは垂直護岸のドブ川だけではないかと。むしろ高度成長期の突貫工事を象徴するこの景観を、大切にすべきではないか。なにせ首都高は、世界初の都市高速なのだ。
数千億円を、文字通りドブに捨てることにならないよう祈る。
<結論>
外環道千葉区間ですら、建設による収支は差し引きゼロ。日本橋の地下化は、完全なマイナスになる。景観の向上という大義名分に反対する意見はほとんどないが、冷静にメリットとデメリットを見比べるべきだ1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
それによると、造り直す2.9kmのうち、地下化されるのは神田橋―江戸橋間約1.8km。一部八重洲線のトンネルを活用し、江戸橋JCTの構造も簡素化(日本橋区間と汐留方面の接続を廃止)することで、事業費を抑えるという。
具体的な事業費が算出されるのはこの夏だが、それでも予定されていた1412億円の数倍に膨らむことは確実だ。
では、地下化することでどんな効果があるのかというと、移動時間の短縮(=混雑緩和)は皆無。地下化で車線数が増えるわけではないし、上り下りの勾配が激しくなるので、むしろ若干のマイナスになるだろう。
江戸橋JCTの簡素化により、現在大型車通行禁止のKK線(東京高速道路)を、構造的に補強する必要も生じる。KK線の高架下にびっしり入っている店舗は、一時移転の必要性が出るかもしれない。
また、竹橋-江戸橋間全線を地下化するのなら、高架を片側2車線ずつ造り直す場合より、片側1車線の対面通行となる期間を短くすることも可能だが、一部地下化ではそういうメリットもない。
結局、数字に表れる経済効果はゼロで、最大のメリットは「日本橋上空を覆っている“醜い”首都高の高架を撤去できること」になる。
1
2
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ