懸念される「ロシアン・オウム」による麻原遺骨奪還作戦とは?
すべての責任を弟子に押し付け、その後、口をつぐんで真相を闇に葬ったグル(尊師)を、信者たちは「殉教者」と呼ぶのだろうか――?
地下鉄サリン事件からおよそ四半世紀。13の事件で27人もの命を奪ったオウム真理教元代表・麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚(63)ら7人の教団元幹部の死刑が、7月6日に執行された。1998年以降、一日に7人の執行は最多というが、残り6人の刑も、今後、粛々と執り行われることになるだろう。
この日、公安調査庁の職員が「後継団体」として観察対象にしている「Aleph」(本部=埼玉県越谷市)や「ひかりの輪」(本部=東京都世田谷区)、「(通称)山田らの集団」(本部=石川県金沢市)の関連施設に立ち入り検査を実施。Alephは、麻原が立ち上げた「オウム神仙の会」が、オウム真理教に改称して30年に当たる昨年、「真理の教団開設30周年記念式典」を開催するなど「麻原回帰」の動きが懸念されており、今回の死刑執行を機に麻原が「神格化」され、東京拘置所が「聖地」になってしまうことを警戒する声も上がっている。
果たして、麻原を崇拝する「残党」たちが、再びテロリスト集団と化す可能性はあるのか? 6年前に「ひかりの輪」代表の上祐史浩氏と対談したことをきっかけに交流を続けているという埼玉大学非常勤講師で宗教学者の大田俊寛氏が話す。
「死刑執行当日の会見で、上祐氏は被害者への賠償の継続について真っ先に発言していました。私が知る限りでも、ひかりの輪は麻原崇拝とはすでに決別しており、今回の刑死を『殉教』と見なす可能性はあり得ない。一方、Aleph内部では『自分たちの帰依が深まれば、麻原が延命される』という考えがあったと聞いています。2012年にオウム真理教の逃亡犯がすべて逮捕され、結果として死刑執行の時期が遅れたのも『信仰の効果』というわけですが、今回の執行によってそうした考え方が現実的ではなかった、と認識するきっかけになってほしい。現在、公安調査庁は『ひかりの輪はグルとの決別を装う“麻原隠し”の団体で、実はAlephと繋がっている』と公表しています。彼らなりの義務感・正義感に基づくものだと思いますが、結果的に誤った情報を社会に流している。後継団体の人々が自分なりに反省を深めようとしても、そのたびに不正確な情報が流されては、彼らの間に『反省してもムダ』という雰囲気が広がり、すべては国家権力の横暴であり、陰謀であるという、被害妄想的な思考法が強化されてしまう恐れがあります」
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