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2018年上半期、最もアニソンを売った女・上坂すみれが語る“ノーフューチャー”な現在と未来

すみぺとトレンドがクロスした時代の特異点

――アルバム収録曲の「よっぱらっぴ☆」みたいなアゲアゲのユーロビートは平野ノラのネタがウケ、荻野目洋子のリバイバルヒットがあった去年から今年によく似合う音だし、アルバム表題曲のようなシティポップも、Especia(2017年まで活動のアイドルグループ)が音楽マニアに注目され……。 上坂:あっ、私、Especia好きなんですよ。 ――おー。で、そのEspeciaもそうだし、SuchmosとかYogee New Wavesのような広義の上でシティポップに括られるバンドが活躍しているここ数年ならではのサウンドでしょうし。 上坂:なるほどー。時代が私の趣味に追いついたんですかね? ――そういう感じがするんです。ユーロビートもシティポップも上坂さんにとっては付け焼き刃ではない。ユーロビートは「来たれ!暁の同志」(2014年発表の上坂の4thシングル曲)でやっていたし、シティポップもすでに「哀愁Fakeハネムーン」(2014年発表の1stアルバム『革命的ブロードウェイ主義者同盟』収録曲)で歌っている。今回安易に流行りに乗ったわけじゃないですから。 上坂:確かに6年前からやってることは変わらないはずなのに、最近シティポップをやってくれる方が増えたり、1980年代リバイバルみたいなものがあったりしたおかげで、ようやくみんなと同じ趣味を持てた感じがします(笑)。でもなんか不思議ではありますね。それこそ平成2桁台生まれの女の子が荻野目洋子さんの「ダンシング・ヒーロー」を踊っていたり、JKが工藤静香さんの曲の振り付け動画をTik Tokにアップしていたり。仲間が増えた感じはするんだけど、私とはまた違う楽しみ方をしているのが、すごくいいなと思っています。 ――なんで時代が上坂すみれに追いついたんだと思います? 上坂:100%偶然ですね。あと半年したら私はまた時代に追い越されるんだと思います(笑)。今はちょうど時代の特異点に到達しただけで、また時代は私のもとを去っていくんだろうな、って。 ――じゃあ、またも須藤采配がズバリ! というか、ものすごく絶妙なタイミングでアルバムを発表しましたね。 上坂:「須藤さんって実はやればできるんだなあ」って感じですね(笑)。 ――昼間から飲んだくれてはいるけれど(笑)。あと『ノーフューチャーバカンス』というアルバムタイトルもすごく時機を得ている気がするんですよ。 上坂:そうですか? ――今の社会に「新元号の新時代が始まるぞ!」的な明るい希望は見出せないですし。 上坂:でも私にとって日本が明るかったためしなんてないですから。 ――あっ、そうか。上坂さんはバブルが弾けた年の生まれだから。 上坂:そうなんです。平成3年以降の日本しか知らないので、常にノーフューチャーです(笑)。 ――ではなぜ今アルバムタイトルに「ノーフューチャー」と? 上坂:これまで『革命的ブロードウェイ主義者同盟』『20世紀の逆襲』と漢字の多いアルバムタイトルが続いたので、ちょっと軽やかにしたいなあという思いがあって……。 ――軽やかにしたいから「ノーフューチャー」? 上坂:『沙羅曼蛇』っていうゲーム(1986年稼働のコナミのシューティングゲーム)のサントラに入っている「ノーフューチャー」っていう曲が好きなので、私の中では「ノーフューチャー」はカッコいい言葉、いい言葉に分類されているんです。残機はゼロだけど勢いはあるって感じで。なので語感から「ノーフューチャー」っていうフレーズが思い付いたんですけど、さすがにそれだけだと、私の音楽活動自体があまりにノーフューチャーなものになっちゃいそうだったので、なんかこう「ノーフューチャー」に続くいい意味合いの言葉を探していたんですけど、ちょうどその頃アーバンギャルドの10周年記念ライブ(2018年4月の「アーバンギャルドのディストピア2018『KEKKON SHIKI』」)を観せていただいて。そのときにふと「バカンス」がいいな、となったんです。平成最後の年に句読点を付ける感じというか、お休みのような、未来がないような感じがして。 ――「アーバンギャルドにインスパイアされた」と言われると確かにうなずけますね。 上坂:アーバンギャルドさんの曲は思想の集まり、ボキャブラリーの海ですから。それをヒントに、おしゃれで、かつ刹那感のあるタイトルを付けてみました。 ――じゃあこちらの深読みが過ぎました。そのアーバンギャルド・松永天馬さん作詞の「平成生まれ」なんかも上坂さんが平成生まれゆえにバブルや学生運動のような狂騒を経験したことがないことを歌っている。凪いでいるようなんだけど、確実に右肩下がりに様子がおかしくなっている現在を歌っているのかしら? なんて気がしたんですけど……。 上坂:いや、これは私の日常ですね。平成3年以降の日本が明るかったためしがないように、私の気分がアッパーだったためしもないですから(笑)。常に凪いでます。
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ノ―フューチャーバカンス

【通常盤】


【CD】
01. 予感03
02. POP TEAM EPIC
03. 恋する図形(cubic futurismo)
04. よっぱらっぴ☆
05. 地獄でホットケーキ
06. リバーサイド・ラヴァーズ(奈落の恋)
07. 祈りの星空
08. 平成生まれ
09. Hello my kitty
10. チチキトク スグカエレ
11. ヤバい◯◯
12. 文豪でGO!
13. どうして!ルイ先生
14. アンチテーゼ・エスケイプ
15. 踊れ!きゅーきょく哲学
16. ノーフューチャーバカンス

【初回限定盤A付属Blu-ray】
★MUSIC VIDEO
01. 恋する図形(cubic futurismo)
02. 踊れ!きゅーきょく哲学
03. リバーサイド・ラヴァーズ(奈落の恋)
04. POP TEAM EPIC
05. ノーフューチャーバカンス
★映像特典
ノーフューチャーバカンス MAKING
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