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売れないアラフォー俳優の日常「週7日のバイトでもいつか来るチャンスを待つ」

「夢を持とう」、「好きなことを仕事に」  昨今、これまでに無かった様々な働き方が注目されるようになり、このようなポジティブな言葉が、多く蔓延し始めている。しかし、それは本当に万人を幸せにすることのできる言葉なのだろうか? 今回は、夢を持ち、好きを仕事にし、しかしいまだ幸せを掴めない男たちに話を聞いてみた。  約束の場所に現れた男性、竹田さん(44歳・仮名)は、身長180cmを超える長身に爽やかなマスク。一昔前のトレンディドラマに出演していそうなルックスで、一般的に見る40代とは一味違う風貌だ。それもそのはず、竹田さんの職業は「俳優」である。

週7日のバイトで生計を立てる

「俳優の仕事は今は月に1本あれば良い方ですね。その他の時間はひたすらバイトをしています。今は都内のバーで深夜の時間帯に働いています。オーナーも心の広い方で、突発的に仕事が入った時も融通を効かせてくれますし、役者仲間も結構働いていて情報交換にもなります。ただ労働基準法の関係か、最近では週に6日しか働かせてもらえず、仕方なく業務委託契約でチラシ配りの仕事も始めました」  映画俳優になる夢を掲げ24歳で上京。有名俳優の付き人を経て俳優活動をスタート。俳優としてのキャリアは今年で20年になるが、いまだ代表作と呼べるものは無いそう。現在は時給1500円のバーテンダーの仕事を続けながらチャンスを待ち続ける。アルバイトでの収入は月によってばらつきはあるがおおよそ25万円ほどだという。

いつか来るチャンスに賭けたい

「2、3年前ですかね、全国上映されるような作品ではないのですが、小さな映画の中でメインキャストとして出演することが出来たんですよ。今はネットが盛んになり、そういった小さな作品でもクチコミが広がり話題になればそのまま売れる。なんてことも珍しくはないんです。  現に僕の知り合いなんかもそれで有名事務所に引き抜かれ、なんてことになりましたし。僕の場合はそうならなかったですけどね」  現在は都内の小さな芸能事務所に所属している。しかし俳優の仕事の話はほとんど来ないと言う。 「やっぱり年齢が年齢ですからね。事務所もこんなおっさんよりも若くて可能性もある人材に投資するに決まっています。それはどこの事務所だって一緒でしょう。でも、その状況に悲観していても仕方ないですよね。今は昔から繋がりのある人脈を頼って、自分で仕事を取ってくるようになりました。事務所もそれを認めてくれています」 幸せを掴めない男たち 実は竹田さん、この日は地方局で放送予定の連続ドラマの撮影に参加した帰りだという。1シーンの出演で拘束時間は5時間ほど。セリフは一言で、ギャラは1万円だ。自らが取ってきた仕事だが、ドラマ出演にあたってのスケジュール管理を事務所に任せていたため、手数料が引かれ、取り分は6割の6000円だそう。今後に不安はないのか聞いてみた。 「今後の不安が無いと言えばそれは嘘になります。チャンスの多い都内に住むと家賃も高いですし、お金がないと結婚も出来ない。ただ、僕この仕事が好きなんですよね。月に1本の仕事で好きも嫌いもないだろうって思われるかもしれませんが、自分ではない人を演じるのが楽しくて仕方ないんです。  この前だって若手イケメン俳優に上から目線で物を言う役を演じました。現実ではこちらが上から物を言われる立場ですが…(笑)。演技だとそういった現実もひっくり返る。それが面白いんです。それに、この仕事には夢があります。昨日までバイトに勤しんでいた仲間があっという間に売れっ子に!なんてことも何度もありましたし。  普通の会社勤めでは経験できない刺激と夢があると思うんです。だからここまで来たら何としてでも売れてやりたいと思っていますよ。最近行われた同世代の俳優飲み会で仲間に刺激を受け、来月からはバイトを少し減らして演技のワークショップに通うことにしたんです。どうせ続けるなら自分を磨き続けないとライバルには勝てないですし」  演技のワークショップは月4回の授業で2万5000円。海外の演技法を駆使したレッスンのようだ。竹田さんのその投資が無駄にならないことを祈るばかりである。
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なぜそこまでして俳優にこだわる?
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